住み慣れた神戸を離れ「いちご農家」にジョブチェン!家族との濃厚な時間が僕の宝ものになった

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こんな方にお話を伺いました
南 真之(みなみ まさゆき)

生まれも育ちも兵庫県神戸市。現在は、島根県安来市在住。10年以上アパレル業界に身を置いた後、パートナーの実家がある島根県へ移住。苺の観光農園の立ち上げを目指しながら、直売所のプロデュースや空間デザインにも取り組んでいます。Instagramはこちら

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子どもたちとの未来を想像できなかった それが移住のきっかけ

島根へ移住を決めたのはなぜですか?

2年前に島根県安来市へと移住を決めるまえは兵庫県神戸市に36年間住んでいました。神戸という街が大好きで(笑)都会的な魅力がありながら、六甲山や日本海といった自然も身近で、趣味のアウトドアが楽しめる。結婚してから子ども2人が保育園に通うまでの間、家族4人で神戸で暮らしてきました。

でも、仕事でステップアップした未来と10年後の家族との暮らしを考えたときに、このまま働き続けるイメージが出来なかったんです。保育園・小学校時代の子どもの成長はめまぐるしい。その成長をあまり見れないまま、子どもたちが大きくなってしまう気がしました。

いまは保育園に行く前に、遠回りして森を通り抜ける日もある

家族との時間が足りないと感じていたのですか?

そうですね。

もともとファッションが好きで人と関わる接客も好きでした。また、店舗で責任ある立場になってからは、販売戦略を数値から分析したり。これも苦ではありませんでしたね。ブランドカラーなのか一緒に働いていたかたの年齢層もさまざまで皆パワフル!

ただ、家族が起きる前に家を出て寝てから帰るという生活が長く続いていました。自分のキャリアアップに反比例して、休日になると僕は疲れ果てていて。家族とアウトドアに出かける元気もない日が増え、自分の理想とするライフスタイルとのズレを感じるようになりました。

理想とするライフスタイルとは?

昔から家族と一緒に時間を共有して、皆で過ごすということが好きでした。特別な何かをしたからというわけではなく、家族と過ごす時間が楽しかった。だから、僕も家族と一緒にアウトドアに出かけたり、子どものそばで成長を見守ったり、家族と時間を共有していきたいと思いました。

「男だから」と長時間家族のために遅くまで働いて稼いだり、仕事に打ち込む生き方もあると思います。ただ、僕が大切にしたいライフスタイルがそうではなかったから「移住」を選択しました。

時間があくと 家族を山に連れ出す

長く住み慣れた街を離れることに迷いはありましたか?

全くありませんでした。大好きなアウトドアが身近にあるところに生活の基盤を置けるのも魅力的でしたね。

実は、妻の実家へ帰省するたびに緑豊かな田園風景を目にして、その風景に魅了されていたんです。海も山も神戸にもあったけれど、里山は近くにありませんでした。移住を決めてからは「あの田園風景の中に住める!」という期待の気持ちが不安よりも大きくて。だから、引越しの手続きに追われる日々も楽しかったです。

移住した結果、理想のライフスタイルは実現しましたか?

実現しましたね。子どもたちに「下の階に響くから走らない!」「もっと静かに!」とダメを言う回数を減らせてよかった。いまは元気すぎるくらいにのびのびと走り回っています(笑)

里山の田園風景に囲まれて過ごすのも、気持ちが良いですよ。少し車を走らせれば日本海にも出られます。また、松江市や米子市という県内で人が集まる場所に挟まれているので、買い物にも困りません。

移住を決めたら下調べを念入りに 就農パッケージを利用

なぜ移住後「いちご農家」になろうと思ったんでしょうか?

苺ってね、その存在だけで、魅力的すぎる作物なんですよ。赤くて甘くて人気があって、可愛いし、デザインが映える。パッケージだって工夫ができるから、アパレルで培ったスキルも苺なら活かせる確信があったんです。

真っ赤に色づいた苺を 嬉しそうに眺めている

移住には下調べが重要とのことですがどんなことを調べましたか?

妻の帰省で何度も訪れていた地でしたが、移住するにあたり制度面と雰囲気の両方を調べました。特に、全く縁もゆかりもない土地への移住の場合は事前の調査をしっかりとすることをおすすめします。

具体的には、行政の方向性や制度でしょうか。「自分のやりたいことと行政のサポート体制が合うか」「どのように移住の受け入れがされているか」も市役所などへ確認する。これらを知っていれば、移住したあとの金銭面の苦労も減らせるはずです。

未経験から農業を始めるのに行政サポートを活用しましたか?

僕は移住の際に利用できる「就農パッケージ」を利用しました。有機野菜か苺か作物を選べるのですが、僕は最初から苺しか考えていなかったから見学も苺にしか行きませんでした(笑)1年間の研修制度もあり、師匠の先輩農家から農業のイロハを教えてもらいました。研修生を卒業したら本格的に農家への第一歩です。

また、農業をする場合は研修以外にも、ビニールハウスなどの設備や資材に対してはもちろん、移住先の住まいの補助などのサポートが用意されています。

参考:就農支援制度|安来市

はじめての農業で体力などに不安はありませんでしたか?

全長40mのビニールハウスの建設など力仕事は大変でしたね。けれど、それも楽しい!通常は5〜6人で2週間半ぐらいかけて1棟建てるのですが、僕は1人で1ヶ月半かけて建てたんです。先日、地域の会議に顔を出したとき「あの1人でハウスを建てている人?」と言われていました(笑)

愛車と ハウス入り口のコーディネート経過

はじめてのことだらけで苦労することも多くありましたが、その代わりに13年間アパレルを経験した自分だからこそ得意なこともある。例えば、ハウスの入り口に大好きなアンティーク雑貨をセンスよく飾ったり、Instagramの投稿の色合いやデザインをおしゃれにしたり。農園のロゴデザインも自分で考えました。

アパレルと農業の経験を活かし第三のキャリアを切り開く

空間づくりも好きなのですか?

インテリアに凝りだしたのは、中学3年〜高校生の頃ですね。最初は自分の部屋の模様替えを試行錯誤することからスタートして、仕事では店舗レイアウトや商品陳列にも力をいれていました。キャンプにハマってからは、ギアをインテリアのように配置したり、色合わせも考えたりして、空間をおしゃれに演出することが大好きでした。

キャンプへ行く時は、車への積載も試行錯誤する

神戸に住んでいた頃、六甲山を散歩していたときにカフェをオープンする方と仲良くなって。その後、カフェの一角にテントを立てたり、おしゃれなギアを組み合わせて、お客さまがくつろげる空間を作ったこともあります。

今でも空間デザインのご相談を受けたりしていますか?

ありがたいことにご依頼が増えているんです。

大阪から移住して就農された方のいちごカフェ「苺や kirito」の内装の相談を受け、アドバイスさせていただいたことがあって。そこから「デザインに強い」と噂になったようです(笑) Instagramのダイレクトメールから、近隣の駅の休憩所の内装デザインの相談がきたときには本当に驚きました(笑)

カフェ「苺や kirito」でのイベント時に出店

なかでも印象に残るご依頼はありますか?

安来市新十神町の直売所「十神山 なぎさ直売所」の店舗プロデュースですね。

閑静な住宅街にある 無人市をデザイン

「どうしたら他の市町からも直売所に来てもらえるか」がプロデュースのポイントでした。その直売所は住宅街の一角なので、そこにあることが知られていないと訪れてもらえない。だから、僕はデザインの力を借りて、わざわざ訪れたくなるような空間を演出することが必要だと考えました。

「インダストリアル×アンティーク×マリン」をテーマに僕が好きなものをぎゅうぎゅうに詰めこんで。インダストリアルとかアンティークとか、農業や直売所のイメージからかけ離れているので最初は驚かれました(笑)でも、世界観がしっかりと表現できていたから、任せてもらえたのだと思っています。

好きなことお仕事につながっているのですね。今後の展望は?

今年の9月に「いちごの木△」という農園を立ち上げる予定です。2022年には観光農園へと進化させていくために、いま動いています。

「木」が根をはるように地域に根づく農園にしたい、「木」の根元で苺を楽しみながらゆっくり休んでもらえる場所にしたい、という思いを農園の名前にこめました。

可愛く魅力的なデザインにすることで、近隣の方だけでなく、少し離れたところからも目的としてきてもらえるはずです。マーケットや顧客のニーズを分析して、そこへ好きなことを詰め込む。そうすれば、おのずと集客につながると考えています。

農林大学の生徒さんたちを ドリッピコーヒーと苺でおもてなし

「これからの農業」として、こういった取り組みを農林大学の生徒さんたちに伝えたいですね。好きなものを並べてお話するのも、楽しい時間です。

時間と空間を家族と共有する 理想のワークライフスタイルを実現するために

1日のタイムスケジュールは?

苺の収穫がある時期は、朝5時に起きて、5時半には仕事をスタートします。その時間から働くとパック詰めなどが午前10時には終わるので、そこから事務仕事などを行っています。あとは天気次第ですね。

繁忙期は 3〜4月の収穫どき

なかなか忙しい毎日ですね。

いまは妻が3人の子どもを見てくれています。その代わり予定が空いたら「今日は夕焼けが綺麗だから海まで見に行こうか!」「山に遊びに行こう!」と子どもたちや妻を連れ出します。仕事で一杯一杯になって、一緒に時間を共有できなければ、移住した意味がないですから。

妻とは「あうんの呼吸」というのか、意見が合うことが多いんです。家族は距離が近すぎる分、綺麗事ばかりではありませんが、助け合って、時間を共有することが大切だと思っています。どちらかに負担がかかれば、どこかでその負担を肩代わりする。育児も家事もそのときできる人がする。そういう風にしています。

地方移住に迷っているなら、まずは動いてみる!

移住をするかどうか迷っている方へ声をかけるとしたら?

漠然と「いまの暮らしを変えたい」と思っているかたは、移住をぜひ検討してみてください。豊かな自然を楽しめて、人との距離もほど良いし、行政によっては農業の研修があったり、手厚い住まい補助もありますよ。都会ほど人と疎遠すぎず、人ともっと関わりを持ちたいかたには向いています。

僕の場合は、妻の実家が近いことで馴染みやすかった。もし血縁関係や知り合いの縁がある土地への移住であれば、すぐにでも移るのをおすすめします(笑)地方のコミュニティに新たに入っていくのは、地域住民が参加必須の集まりがあったり、もちろん大変な面もあります。でも、行けば毎回必ず学びがあるんですよ。

それから、動くことが好きな人にも移住はおすすめですね。農業は全部自分で決めて動くため、毎日やることが多い。だから、怠ける人には不向きかもしれません(笑)その代わり全部自分次第でできるという解放感があります!

移住しても変わらない。近くの海で のんびりと遊ぶ子どもたち

昔と時代が変わってきて、いまは個性を前面に出すときだと思います。いまのライフスタイルに満足できていないなら、見直してみてほしい。移住すると多くの幸せがあって、僕の場合は「家族との時間を優先できるライフスタイル」がそうでした。田舎暮らし、おすすめです。

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もえこのアバター もえこ 在宅ワーキングマザー

兵庫県在住。妊娠中から在宅ワークを開始し、現在フルタイムで稼働中。趣味は推し活と読書。

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