現役大学生が運営するシェアハウスの住民が取り組むマイクログリッド田舎生活

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こんな方にお話を伺いました

宮 将太(みや しょうた)さん

新潟市中央区から新潟市西蒲区岩室地域へコミュニティデザイナーを志望し移住。岩室温泉の地域と風土の豊かさを最大限に享受しながら自分本位に自身のライフスタイルを実行していくことこそが求めるまちづくりにつながると思い、現在に至る。その後、居住していたシェアハウスの共同運営者に就任。現在は他給自足、マイクログリッドの田舎暮らしを探求しながらも、自身・地域内・地域外をつなげるシェアハウス「とも家」の運営に尽力する。

亀蔵メモ

マイクロ‐グリッド(micro grid)とは、1999年にアメリカの電力供給信頼性対策連合で提唱された考え方および電力関連の専門用語。 

具体的には、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、燃料電池など小規模な分散型電源を多数設置し、各地域でエネルギーを地産地消および融通できるエネルギーネットワークを指しています。

建設費が安価で、送電によるエネルギーロスが少ないことが特徴です。 国内の電力供給システムは、大手電力会社や発電事業者で所有している大型火力発電所や原子力発電所、水力発電所などで発電された電力を各家庭や工場、倉庫、オフィス、商業用施設などへ供給する流れです。

しかし、大規模な電力ネットワークを中心としたインフラに頼っていると、地震や地震による津波、台風被害などで一部設備が故障した場合に広範囲で長期停電してしまいます。 

マイクログリッドに基づいた電力システムを各地域や需要家主導で導入しておけば、非常時でも地域内で電力を確保できることから日本国内でマイクログリッドが注目されています。


TOPIC

岩室地域のコミュニティデザイナーを志したきっかけ

自分の心の中に、農業(食べるものを作る)を通じて、生きることはどういうことなのか、またその地域に入りこんで取り組む街づくりとはどんなことをするのかという探求したい軸が2つありました。

農地があり、住む場所があると言う条件を元に、人づてで偶然たどり着いたのが、私の出身地(新潟市中央区)からほど近い新潟市西蒲区岩室地域でした。

そもそもコミュニティデザイナーを志したのは、高校三年生の時に山崎亮さんという方の著「ふるさとを元気にする仕事」がきっかけです。山崎亮さんは、住民とワークショップをしてまちづくりを考え、地域の魅力発見のためのプロジェクトを始めたり、まちのために何かをしたい人をサポートし、活動の地盤が固まるまで民芸品を作ったり、住民主体とした街づくりをしていることが直感的にとても素敵だと思い、自分も街づくりに人生を捧げようと決心しました。

自身が創り上げた新しい環境や仕組みで人々が幸せになる。これこそが僕の望む他者との豊かな関係性であり、いきがいであると気付きました。そのため、まちづくりとは僕にとって自分自身を表現する方法だと思いました。ちょうどその時期がコロナ禍でしたので、人との繋がりが制限されてしまい、何から始めたら良いのかわからないまま、取りあえず街に入ってみようと思いその地を探しました。


シェアハウス「とも家」での取組み

今から3年前に、岩室地域にある「岩室シェアハウス」に彼女と2人でイチ利用者として移住し、シェアハウスの1階を「とも家(ともや)」と名付けました。

地域の方とのつながりをつくろうと、様々な大人たちに会いに行き、田んぼでの米づくり、養鶏などの農業を主体とした活動を始めました。活動が盛んになるにつれ沢山の人が集まるようになり、「とも家」の活動を継続しながら、私が「オーナー」になりシェアハウスの運営をしてみないかと声をかけられ運営に携わることになりました。

現在の入居者は私達を含め「とも家」活動に関わる5名3部屋の利用となっています。まずできることとして、都市ガスや水道、電気などの公共インフラの利用をなるべく少なくし自立した生活をできることを目標に少しずつ切り替えています。例えば、ソーラーパネルを設置して電源を取り、熱源は薪ストーブで暖を取り、水道は、雨水や井戸を利用することでマイクログリッドに近づけています。

昔ながらの生活様式とも言えますが、農業も昔は肥溜めがあり、それを肥料として田畑へ撒いて米や野菜を作り、それを人が食べると言う「循環」が自然と成立していたと聞いていますので、違和感は感じていません。

そう考えるに至ったのはコスト削減もありますが高校生の頃ある時、なぜ自分の部屋はエアコンで温められているのだろう?と疑問が湧き、ガス、電気、水道の供給の仕組みと、それが環境破壊にも繋がっているといった言いようのない探求心が芽生えたことがきっかけでした。

お金を払えば供給(ガス、電気、水道)されるものでなく、自分で賄える面白さや楽しさ、生きることの喜びを感じられるのがマイクログリッドな生活なのだと思っています。そんな生活をしてると今まで何とはなしに使っていたガス、電気、水道に対して有難さが増しました。例えば、エアコンを使えば快適だけど使った分だけ代償を伴うことを意識するようになりました。

また、2023年12月には「おてつたび」というサービスと提携し「とも家」の利用者を増やす取り組みを始めました。古民家を活用した飲食店と宿泊施設で清掃やセッティングのおてつだいという内容で募集をしました。募集開始後すぐに4名の申し込みがありました。このように地域の飲食店や事業所と提携し人手不足の解消もありますが、西蒲区のことを少しでも知ってもらい、今回の体験や山の風景など、西蒲区並びに岩室地域のファンになってもらいたいと考えています。


マイクログリッドな暮らしの実践 他給自足型農業

マイクログリッドな暮らしの一環で、自分たちで賄えそうなものとして考えたのが「お米」でした。

幸い4a田んぼを借りることができ田植から稲刈りまでやってみようとなったのですが、そもそも田植とは「何をすること」で「どんな道具が必要なのか」という状況でした。そこで近くにある民族資料館に幾度となく通い、いくつかの稲作農具(以下、民具)があることを知りました。借りた田んぼは一般的な農家に比べて極めて狭いですが、トラクターは知人の農家にお願いし田起こしをしてもらいました。


手作業で出来る範囲の面積で栽培することと、大型農業機械を保有していなかったため稲作民具と人力で米を作ることにしました。意外にも倉庫の片隅に眠る民具があちらこちらにあり必要なものが揃ったものの、今度は植える苗が無い!となり(笑)近隣の沢山の農家の方から「苗」を譲ってもらうことでができ、目前に迫る田植えには何とか間に合いました。


他給自足型米作りとでもいうのでしょうか、こんな形で秋の収穫を迎えることができました。採れたお米は「とも家米」としてこれまでの作業に携わった皆さんを中心に収穫祭を催し自作の野菜を使用した特製カレーや、梅干しなどで美味しくいただきました。これを、一過性のものでなく来年も再来年もずっと続けて行けるようにしたいと考えています。


参考元:稲作の歴史とそれを支えた伝統農具 | 稲作の歴史 | クボタのたんぼ [学んで楽しい!たんぼの総合情報サイト] (kubota.co.jp)

「住み開き」 新しいコミュニティの形

農作物の収穫体験!はよく目にしますが、その前の過程を体験してみたいという声を時々聞きます。例えば、米作りの過程で中干作業があります。(中干作業:水稲栽培においての水管理作業で、分げつ(※1)期の後期に一時的に水田から水を抜いて干すことをいいます。 (※1)分げつ…水稲が枝分かれし、新しい芽が出てくること。)

田面に溝切機械を使い行うのが一般的ですが、こういった作業体験(お手伝い)をしてもらうことで、農家も作業軽減になり助かると思うのです。そういった体験者が寝泊まりし、自炊する場所として「とも家」を利用できたらと考えています。そうすれば農家の方もいろんな負担が減るので作業に集中できるわけです。農業体験の「受け皿」として「とも家」を運営していくために、まずは「とも家」の利用者を増やしこの場所を維持していくことがこれらの目標ですね。

「住み開き」によって家に人が集まって、出会いがあり、学びがあり、賑わうコミュニティ拠点として活用する。これが、私たちが思い描く近しい未来です。

執筆後記

地域の主産業である農業を通じ、集える場所として「とも家」を構築している宮さん。温泉地でもあるこの岩室地域に根差すさまざまな体験ができる面白いシェアハウス「とも家」に必ずなるだろうと感じ、またそうなって欲しいと淡い期待を抱きました。


食は農、農は命に繋がること。



そんな農業に関わりたいと思う方々方達との橋渡しの場があることで、関係人口が少しづつでも増えていくといいですね。私も含め地域の大人達も、何かしらのお手伝いをしたいとうずうずしています。「とも家」が、地域にとっての起爆剤になってくれるはずです。

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AUTHOR

亀蔵のアバター 亀蔵 兼業農家COO

新潟市8行政区の中の「ハーベスト(収穫)イエロー」イメージカラーを持つ地区在住。美しい田園風景が広がる地で週末稲作兼業農家を営む。スキルアップと将来を見据え在宅ワークも生業にと考えNo frameにジョイン。農業の抱える問題について何かできることはないのか?ライターとして発信することを決意。楽しく人が集まる農業のあり方を追求し地域活性化を目指す!

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