「キラキラ」への興味を磨き続けて 僕は中学生起業家になった

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こんな方にお話を伺いました
Ayuさん

愛知県在住の中学2年生。小学6年生の時に、CEOキッズアカデミーのビジネスコンテストで優勝。その後「鉱物トランプ」作成のため、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げ、565%の達成率で終了。2022年8月には鉱物トランプの第3弾を英語版でリリース。現在、合同会社Ayuの役員に就任している。Instagramでは遊び方の動画や石集めの様子などを公開中。

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自分の商品をきちんと形にするために会社を起こした

もともとビジネスに興味があったのですか?

Ayuさん(以下「Ayu」と記載):ビジネスは「大人の世界」だと思っていました。身近に起業している同世代の方もいなかったので、自分がするという発想もまったく浮かびませんでした。

転機となったのは、コロナ禍に入会した「CEOキッズアカデミー」です。“こどもにビジネスを教える”というスクールで、僕以外にも小学生や中学生の方が学んでいました。

「CEOキッズアカデミー」に入会したきっかけは?

Ayu:僕がアカデミーに入会したのはコロナ禍の2020年で、学校がときどき休校になることもあり、家で過ごす時間がたくさんありました。ある日、母が「オンラインで通えるところがあるよ」とWebサイトを見せてくれて、僕自身が「家でできるし、楽しそう!」と思ったのが入会のきっかけです。

Ayuさんのお母様(以下、母):オンラインで通えるスクールの一つとして紹介したところ、とても楽しそうに受講し始めました。はじめは初級だけで終わるつもりだったのですが、夢中になっていって。

Ayu:初期に受けた授業では、レモネードを作る過程でかかる原価を計算したり、「どうすれば売れるか」考えたりする授業が楽しかったですね。その後、中級・上級も受講して、結局全コースを修了していました。上級で受講した「実際にやりたいビジネスについて考えてみる」という講座も、わくわくしました。いろいろな先生から聞くビジネスの話もおもしろかったです。

2020年11月には、アカデミーが開催している小・中学生を対象としたビジネスコンテストに出場し、「大好きな原石の鉱物が学べるトランプカードを作りたい」と提案しました。その結果、158票を獲得して優勝しました。

小学6年生の時「石好き集まれ!3か国語でわかる石のトランプ~これであなたも石博士」というトランプを提案し、見事コンテストで優勝

コンテストの後、アカデミーの先生にアドバイスをもらって、「鉱物トランプ」を発売するためのクラウドファンディングを立ち上げました。そして、2021年11月に合同会社Ayuを設立しました。

母:中学生のAyuは合同会社の代表取締役になれないため、現在、登記上は私が代表社員になり、Ayuは役員として登録しています。

Ayu:母は長年個人事業主をしているので、手伝ってもらいながら手続きを進めていきました。クラウドファンディングでは、目標を無事に達成し、今はオンラインショップで販売しています。それから、ときどき「鉱物トランプ」で遊ぶイベントを開催して、商品を手に取ってくださった方と交流する機会もつくっています。

Instagramでは、バトルカードとしての遊び方なども動画で紹介している

幼少期からキラキラしたものが好きで、眺めることに夢中だった

「鉱物トランプ」のアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

Ayu:鉱物、つまり石は昔からずっと好きなものの一つでした。そこに家の中で遊べる「トランプ」を掛け合わせたのが「鉱物トランプ」の成り立ちです。家で過ごすことが増えたコロナ禍に、家族と一緒にいろいろな種類のボードゲームやカードゲームで遊んでいたところから思いつきました。トランプを選んだのは、ルールが簡単で、子どもから大人までたくさんの人に遊んでもらえると思ったからです。

アイデアの段階で、僕の好きなもの二つを掛け合わせた商品として、似たものがすでに発売されていないかどうかも調べました。見当たらなかったことで「石が好きな人はたくさんいるけど、いまは図鑑くらいしかない。そこにニーズがある」と確信を持ちました。

いつから「鉱物・石」を好きになったのですか?

Ayu:覚えていないくらい昔から好きですね。「石だから好き」というよりも、キラキラしているものが好きで、小さい頃から道端に落ちている石や浜辺の石の中から、キラキラしたものを見つけることにハマっていました。

母:幼少期は楽しいと思うこと、好きだと思うことに夢中になっている様子をよく見守っていました。通っていた幼稚園もとても自由に遊ばせてくれるところで、興味があるものごとを続けている時間は、そのままにしておいてくれたのです。自由な分、先生方は大変だったと思います(笑)。石以外にも、ネイルアートに興味を持っている時期もありましたね。

Ayu:靴下で隠れるからと、足の爪にだけマニキュアを塗って小学校に通ったこともありました。「理科」も昔から好きで、特に天気や宇宙が好きなのですが、それも空や星がキラキラしているからだと思います。

母:どれも本人が楽しそうに眺めたり、図鑑を調べたりしていますね。他にはお城も好きで、旅先でよく訪れています。

Ayu:日本にあるお城は半分以上訪れましたが、詳しい歴史や時代背景については全然知りません(笑)。城壁の石にどのような石が使われているのかを見ることが好きなんです。

思うように54種類の石が集まらず、トランプづくりは難航。 人の手を借りながらブラッシュアップしていった

トランプづくりで大変だったことを教えてください。

Ayu:一番大変だったのは、鉱物を集めることですね。石って家に置かなくても、道で見つけたり、海で拾ったりできるので、今まではそれで満足していました。

でも、「鉱物トランプを作るなら、54種類のカードすべてを違う石でデザインしたい」というイメージを強く持っていたので、石を一から集め始めました。

1つ目は、コンテスト前に母と二人で訪れた出雲大社の近くで買った「アメシスト」です。それから、半分くらいは家の近くにある東急ハンズのストーンショップで集めることができたのですが、その後が難航しました。

ネットで検索したり、石に詳しい方に教えてもらったりしながら、少しずつ集めていたものの、最後の2つは希少な鉱物で、なかなか手に入れられませんでした。クラウドファンディングのリターンとして「鉱物トランプ」を待ってくれている方々がいたので、「急いで作りたい、もうこれ以上待たせられない」と焦っていました。

そのタイミングで、最後の2つに含まれていた「隕石」が、沖縄で開催される「ミネラルショー」に来ると知り、急いで飛びました。ミネラルショーと言うのは、鉱物や宝石の見本市で、珍しい石を見つけられる機会です。

なんと沖縄の会場には、「隕石」のほかに、探していたもう一つの石「翠銅鉱(すいどうこう)」もあり、無事に54種類の石を集め切ることができました。あのタイミングを逃していたら、次はいつ目当ての石に出会えるかわからなかったので、完成はさらに遠のいていたと思います。

第3弾の鉱物トランプ、左「隕石」右「翠銅鉱」

カードに記載している説明文やカードのデザインもご自身でされたのですか?

Ayu:中身の解説は一つずつ作り、わからないところは僕より石に詳しい方々に確認してもらいました。完成品を作る前には自分でも何度も確認しましたが、リリース後に石の名前の表記を見直したいカードや、トランプなのに「A」ではなく「1」と表記してしまったこともあり、「やっちゃったー!」と思いましたね。クラウドファンディングで支援してくださった方からコメントをいただいて、気づいたこともありました。そのあたりは、第2弾のリニューアル時に修正しています。

カードの枠と裏面のデザインは、第1弾からデザイナーさんに依頼しています。はじめは自分で加工もしてみたのですが、文字の位置などを調整してもらい、さらにかっこいいデザインに仕上げてもらったので、すごく気に入っています。

当初は鉱物の写真も、自分で一眼レフを使って撮っていましたが、なかなかうまく撮ることができず、第1弾の製作段階で「僕に撮影は向いていないな」と(笑)。半分は自分で、残り半分は母の知り合いのカメラマンさんに撮影してもらいました。

「旅先で出会った友人と一緒に遊びたい」が多言語製作のきっかけ

第三弾を英語表記でリリースしたのはなぜですか?

Ayu:コンテストでは「石好き集まれ!3か国語でわかる石のトランプ~これであなたも石博士」と題していたように、もともとは1枚のカードに3か国語で鉱物の解説を盛り込む予定でした。でも、さすがに情報が入りきらず、1枚で多言語に対応するのは難しいと判断し、まずは日本語版からリリースしました。そして今回、第三弾として念願だった外国語版をリリースしたんです。

英語はもともと得意だったのですか?

Ayu:いいえ。2022年の夏にコンテストで優勝した副賞として、ハワイに行く機会をもらったので、それに備えて夏休み前から毎日20分から30分、英会話のオンラインレッスンを受けました。挨拶は完璧になったのですが(笑)、現地のお店の方との交渉ではほとんど通じませんでした。それで同伴の先生にフォローしてもらって、ハワイのお店に「鉱物トランプ」を置いてもらえることになりました。

店員の方いわく「クリスマスシーズンに向けて喜ばれると思う」とのこと

親元を離れての海外渡航に不安はありませんでしたか?

母:それまでも旅行には沢山行っていたので、飛行機には乗り慣れていました。だから、そのあたりの心配はほとんどありませんでしたね。

我が家は転勤族で、あるときに「中学受験はしない」ということになったんです。「それなら、教育費が浮く分、楽しみながら経験になることを一緒にしよう」と思って、旅行や体験の機会を増やしました。

Ayu:これまでに行ったことがあるのは、アメリカ、韓国、フランス、中国、メキシコです。フランスでは7日間ホームステイをしました。

母:海外では、子どもに現地でのコミュニケーションを任せることもあります。うまく話せるかどうかは別にして、言語も文化も違う相手と実際に関わってみることで得られるものは大きいと思うんです。

Ayu:もともと「鉱物カード」を多言語対応にしたいというアイデアは、「海外で仲良くなった友だちと一緒に遊べるものを作りたい」というところから着想しました。第三弾は英語版となったので、次は例えばスペイン語など、ヨーロッパ圏の言語で作りたいですね。コンテストで宣言したとおりのものにしたいと思います。

ちなみに、旅先はどのように決めているのですか?

母:特に海外にこだわっているわけではないので、国内旅行もけっこうしています。「美味しいものを食べに行きたい」「この観光地に行ってみたい」というふうに決めることが多いですね。

Ayu:いまは美味しいピザが食べたいので、イタリアに行きたいと思っています(笑)。もう一度訪れてみたいのは、パリのエッフェル塔です。

ビジネスは怖くない 楽しいもの

息抜きとして、していることは何ですか?

Ayu:普段はゲームの『Among Us』や『ツムツム』で遊ぶことが多いですね。挙げてみるとどちらもSFの世界観で、「やっぱり僕は宇宙やキラキラが好きなんだ」と思いました。とはいえ、ビジネスで苦しい思いをしているとか、そのようなことは全くありません。

僕にとっては、ビジネスも好きなことの一つ。「鉱物トランプ」に関連することは、例えばSNSの更新やクラウドファンディングの立ち上げ、そしてトランプのことを考えている時間など、そのどれもが苦ではなく、楽しいんです。

最初はビジネスに関する知識はゼロで、まさか自分が起業するなんて、思ってもみませんでした。でも、やってみたら意外と簡単で、僕にもできるとわかりました。決して、売上を上げて事業を大きくすることが簡単という意味ではありません。「起業すれば絶対もうかる」というような簡単な構造ではないと思います。

でも、こわいものではなくて、やってみたら意外となんとかなるし、想像以上に楽しいのがビジネスの魅力です。僕の場合は、一人で思い悩んだり、考え込んだりすることはほとんどありません。わからないことは家族や先生、知り合った方々など詳しい人に相談しながらやっています。

今は家で学べる機会も数多くあるので、近くに目当ての教室がない人でも、新しいことを始められる絶好のチャンスです。自分の興味があることを思いきって始めてみることが大切だと思います。

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もえこのアバター もえこ 在宅ワーキングマザー

兵庫県在住。小学生2人を育てながら、現在ほぼフルタイムで在宅ワーク中。趣味は推し活と読書。

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