海外の学校文化の1つが、さまざまなテーマにあわせた服装や行動を推奨する「Spirit Day」です。社会的な活動や募金・寄付活動につながるものが多く、1週間、曜日ごとに異なるテーマを設定する「Spirit Week」を楽しむ学校もあります。
このような取り組みは、生徒たちの学校生活をより豊かにし、多様性への理解を深める機会になると期待されています。そこで本記事では各国の「Spirit Day」、日本語でいう「スクールデー」をテーマ別にまとめました。開催の動機や具体的な内容に加え、保護者・生徒たちから見たSpirit Dayの効果や反対意見もあわせてご紹介します。
「Spirit Day」とは?
「Spirit Day」とは、学校やコミュニティで特定のテーマに沿った服装や行動を行う日のことです。海外では、学校の一体感を高めたり、生徒らに特定のテーマについて学ぶ機会を提供するために設けられています。
「Spirit Day」の起源と地域ごとの違い
「Spirit Day」の起源は、アメリカの学校文化に遡ります。もともとは学校の行事や特別なイベントを盛り上げるために始まり、ヨーロッパ圏では文化をテーマにした日や国際理解を深めるための機会として開催している学校も多いようです。
これらの日は、学生の創造力を育むとともに、コミュニティの一体感を高める効果も期待されています。この記事でもご紹介する「Pajama Day(パジャマデー)」のように、服装を合わせたり、特定の色で学校の中を飾ったりするイベントも多く、Homecoming Week(※)や卒業シーズンに合わせて Spirit Day が行われる場合もあります。
Homecoming Week(ホームカミングウィーク)は、主にアメリカの大学で行われる伝統的な行事で、主に秋に開催されています。卒業生が母校に戻り、現役の学生や教職員と交流する機会となっており、キャンパスツアー、同窓会、スポーツイベント、講演会が開催されます。
このHomecoming Weekでは、卒業生と大学のつながりを強化し、学校への帰属意識を高める目的があるほか、現役の学生にとっても卒業生の経験から学ぶ機会となっています。そのため、日本の大学でも「ホームカミングデー」が導入されるケースが増えています。
日本と海外の卒業シーズンには、いくつかの大きな違いがあります。1つは時期です。日本の学校は通常3月に卒業式を行いますが、アメリカなどの国々では5月から6月にかけて行われます。
また、海外の高校・大学の卒業式といえば、卒業生が角帽を投げ上げる光景がよく知られていますが、海外では卒業そのものを大きな人生の節目として祝う文化があり、日本の卒業式に比べて祝祭の雰囲気が強いといえます。
卒業式の前後には「Senior Week(シニアウィーク)」と呼ばれる期間があり、卒業を祝うイベントとして、卒業パーティーや卒業旅行、記念撮影会などが盛大に開催されます。
各国のSprit Dayを「メインテーマ別」にご紹介
Spirit Day の多くは、複数の動機を持って開催されています。ここからは、各国のSprit Day がどのような目的で行われているのかに注目し、メインテーマ別にご紹介していきます。
なお、年代別の傾向としては、幼稚園・保育園に通う年代では簡単でたのしいテーマの Sprit Day が人気で、小学生になるとより創造的なテーマの日が増えます。さらに中高生・大学生では、社会性や協調性を育むテーマや社会的な責任感、よりグローバルな視野を持つことをテーマに据えた行事が目立ちました。
learning:発見、学び、気づき
International Dress Up Day【中国】
中国北京の小学校で行われている「International Dress Up Day(国際ドレスアップデー)」では、生徒たちが自国、または紹介したい国の民族衣装・文化的衣装に身を包み、その国の文化や歴史を紹介します。他の生徒の発表から他国についても学ぶことができ、お互いの文化に興味を持ち、理解することによって、違いを尊重し合い、認め合うことができるテーマの日となっています。
もともと、多様な国々の生徒が集まる学校だからこそ「多様性を学んでほしい」という考えにもとづき開催されており、学習イベント・発表・討論会などへ向けて、自国の歴史や文化をさらに深く学習することで自分のルーツなどを理解するとともに、他の生徒の紹介する国についての理解を深める機会となっています。
学校名 | The British School of Beijing, Sanlitun(北京イギリス学校) |
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学校種別 | 小学校 |
地域 | 中国、北京 |
テーマ | International Dress Up Day |
内容 | 自国、または紹介したい国の民族衣装・文化的衣装に身を包み、その国の文化や歴史を紹介する |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 learning:発見、学び、気づき |
効果・変化 | ・自国について、今まで知らなかった歴史や文化を学び、自信を持って他者へ紹介できるようになる ・自国の文化衣装や民族衣装を着て文化を紹介することにより、自分のルーツにより誇りを持つことができる ・他の生徒が紹介する国の文化や習慣を学ぶことで、他者への理解を深められる ・各国の文化的背景を知ることで、お互いの違いを尊重し、認め合えるようになる ・世界には多くの違う文化や習慣を持った人々がいることを認識し、多様性を感じることができる |
参考:Culture Day
fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心
Teachers dressed as students day【米国】
TikTokなどを探すと多くの動画が見つけられるのが、「Teachers dressed as students day(先生が生徒のような姿をする日)」です。生徒たちはお気に入りの先生の格好で登校し、先生たちは生徒たちのトレンドを真似した格好で出勤します。生徒がワンピースやセーターを着用するのに対し、先生はタンクトップや短パン、フード付きのパーカーやクロックスなどを着用している姿が多く見られます。
アメリカで人気の Spirit Dayの1つですが、もともとは「生徒が毎日学校へ来ることを楽しみと感じていない」ことに課題感を持ち、すべての生徒を巻き込み、楽しさと一体感を感じてもらえるイベントとして始まりました。服装にとどまらず、先生が生徒たちの行動を真似する「Teachers acting like students」も行われています。
学校名 | Day Creek Intermediate School |
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学校種別 | 中学校 |
地域 | アメリカ、カリフォルニア州 |
テーマ | Teachers dressed as students day |
内容 | 生徒はお気に入りの先生の格好で登校し、先生は生徒たちのトレンドを真似した格好で出勤する |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 |
効果・変化 | ・クリエイティビティを発揮できる、自己表現の場を生む ・新たな人たちと新たな会話をする機会となる ・学校を楽しい場と思える刺激となる ・イベントを開催してくれる学校、先生への感謝の気持ちが芽生える ・学校の一員として感じられる ・学校全体の一体感が芽生える |
参考:Teachers dress like students day / Teachers acting like students
for a cause:啓発、推進
Pride Day【米国】
アメリカでは、毎年6月は「Pride Month(プライド月間)」として、各地で LGBTQ+のコミュニティを祝福し、 LGBTQ+の文化や法的・社会的な権利を支持することを示すイベントが開催されます。
そして、この期間に幼稚園から高校まで、広く行われるテーマの日が「Pride Day」です。さまざまな楽しいアクティビティや講演会などを通してLGBTQ+や多様性について学ぶほか、レインボーカラーの洋服やグッズを身につけたり、フェイスペインティングを楽しみます。
ケンタッキー州の学校でこのPride Dayが行われるようになった背景には、州の差別的な法案があります。そのような法案に対して異議を唱え、人々が自分自身でいられる世の中の重要性を発信していくために、多様なジェンダーIDを持つ生徒が集まる学校で、ジェンダー問題、LGBTQ+、多様性への理解を深めるイベントとして行われるようになりました。
学校名 | Walden School |
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学校種別 | 幼稚園、小学校、中学校、高校 |
地域 | アメリカ、ケンタッキー州 |
テーマ | Pride Day |
内容 | さまざまなアクティビティや講演会などを通して、LGBTQ+ や多様性について学び、理解を深める。また、レインボーカラーの洋服やグッズを身につけたり、フェイスペインティングをする。 |
動機 | fun& spirit:楽しさ、校風、愛校心 for a cause:啓発、推進 |
効果・変化 | ・アクティビティやイベントを通じて楽しいイメージを持ち、お互いの違いや趣向を認め、尊重しあう大切さを学び、自分を自由に表現できる場所がある安心感を与える ・知識を深め、お互いの絆を深め、認め合うことにより、個々のプライドを尊重できるようになる。 ・学校内外でイベントやプライドパレードを行うことにより、生徒、保護者、教職員全体でLGBTQ+を祝福し、認め合えるコミュニティーを作る |
参考:PrideDay
Gender swap Day【香港】
「Gender swap Day」とは、男女の服装を入れ替えて着用する日のことです。香港の大学では「ジェンダー表現をより深く理解する機会を作りたい」ということで開催されています。
当日は、男子学生が女子生徒のような服を着用し、女子生徒は男子生徒のような服を多く着用しました。実際に異性向けの服を着ることにより、それぞれが自身の快適なゾーンや内面化した社会的規範を考え直す機会となっています。
学生の中には不快に感じる生徒もいたものの、自分の言動が、他の性別の人々にどのような影響を与えるかをより意識し、積極的に支援したいと考えるようになる挑戦の機会にもなったと回答する生徒もいました。
学校名 | Li Po Chun United World College(李宝春国際連合大学/LPCUWC) |
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学校種別 | 大学 |
地域 | 香港 |
テーマ | Gender swap Day |
内容 | 男子学生と女子学生がふだんの服装を入れ替えて着用する |
動機 | for a cause:啓発 |
効果・変化 | ・ジェンダーと服装に関して、多くのステレオタイプな考えを無意識に採用していたことに気づくきっかけとなる ・これまで異性の服装や行動について知らなかったり考えたこともなかったことに気づくことができる ・周りの人々が女の子をどのように見ているか、メディアでどのように描かれているかについても考えさせられる |
参考:Gender swap Day
Wear it Green day【英国】
「Wear it Green day」はその言葉のとおり、生徒と職員が緑色の服を着用し、学校を緑色に染める日です。メンタルヘルスについて学び、意識を向上することが目的で、緑色に包まれながら、メンタルヘルスの知識やふだんは話しづらい内容をオープンに語り合います。
募金活動を通して一体感を感じたり、身体を動かすことがメンタルヘルスの健康につながることを知ったり、メンタルヘルスの重要性を認識する機会となっています。
学校名 | St Edmund’ s College & Prep School |
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学校種別 | 幼稚園、小学校、中学校、高校 |
地域 | イギリス、ウェアオールド |
テーマ | Wear it Green day |
内容 | メンタルヘルスの重要性を認識するため、生徒や職員が緑色の服を着用して学校中を緑色に染める |
動機 | for a cause:啓発 推進 |
効果・変化 | ・良いメンタルヘルスを保つための方法を学べる ・募金活動や緑色を着て過ごすことで一体感が芽生える ・メンタルヘルスの健康を保つことや、それらをサポートすることの重要性に気づくことができる |
参考:学校以外のWear it Green day
Pink Shirt Day【カナダ】
「Pink Shirt Day」では、過去にカナダで起こったいじめ問題を象徴するピンク色のシャツを着用し、いじめ問題への理解を深め、いじめ防止を啓発するために行われています。生徒たちはさまざまな工作やアート作品を作成して学校を装飾し、過去に起きたいじめ問題と、そこに立ち向かった勇敢な生徒たちの話から、いじめ問題について考えます。
学校全体をピンク色で統一することによって一体感を感じさせるほか、教職員、学校全体でいじめ問題に真剣に取り組んでいる姿勢を見せることにより、生徒たちが学校を安心・安全な場所と感じられる取り組みです。
学校名 | G. Théberge School |
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学校種別 | 小学校、中学校、高校 |
地域 | カナダ、ケベック州 |
テーマ | Pink Shirt Day |
内容 | 過去にカナダで起こったいじめ問題を象徴するピンク色のシャツを着用する。また、生徒たちが工作やアート作品を作成して学校を装飾する |
動機 | for a cause:啓発、推進 |
効果・変化 | ・生徒は一人ひとりが大切な存在であることや、学校が多様性を歓迎していることを感じられる ・クリエイティブなアイデアを出しながら、いじめ防止のために自分ができることを考える機会となっている ・学校の枠を超え、他校やコミュニティーを巻き込みながら「いじめ防止活動」を行うことで、より包括的な環境を作り出すことができる |
参考:Pink Shirt Day
同じテーマでも内容が異なる、各国の「Pajama Day」を比較
Spirit Dayの中には、各国で行われているものがあります。その代表例が「Pajama Day(パジャマデー)」です。その言葉のとおり、学生が学校にパジャマを着てくることを奨励する日で、リラックスして楽しめるイベントとして多くの学校で開催されています。
ただし、同じテーマではあるものの、開催の動機は学校によっても異なり、内容にも学校の個性が感じられます。以下にさまざまな国のPajama Dayをまとめましたので、ぜひ動機や内容を比べてみてください。
fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心
Adelphii Academy of Brooklyn(高校)のPajama Day
アメリカのAdelphii Academy of Brooklynでは、楽しさを重視したPajama Dayが開催されました。先生と生徒がパジャマを着て、お気に入りのぬいぐるみなどを持って登校するというもので、学校側の狙いは、快適で楽しい学習環境を作ること、そして学内の一体感や愛校心を育むことです。
実際に、先生と生徒たちは通常授業もリラックスした状態で楽しむことができるなど、笑顔があふれる1日となりました。
学校名 | Adelphii Academy of Brooklyn |
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学校種別 | 高校 |
地域 | アメリカ、ニューヨーク州 |
内容 | 先生と生徒がパジャマを着て、お気に入りのぬいぐるみなどを持って登校し、リラックスした状態での1日を楽しむ |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 for a cause:募金・寄付活動、制度啓発・推進 |
効果・変化 | ・快適かつたのしい学習環境を作ることができた ・学校全体の団結感を高められた ・学校のスピリットや誇りを感じる1日を実現できた |
for a cause:募金・寄付活動
Cedar Grove(幼稚園)のPajama Day
アメリカのCedar Groveという幼稚園では、パジャマや本を寄付する募金活動を行っており、その最終日をPajama Dayとして、子どもたちが好きなパジャマを着てきて、楽しく過ごします。そして、学校側はパジャマ1組ごとに1冊の本を寄付します。
若年層の子どもたちがたのしく、刺激を受けながらも同世代の恵まれない子どもを助ける活動を行うことで、学内に一体感が芽生えるとともに、寄付を必要とする同世代がいることを認識する機会となっています。
学校名 | Cedar Grove |
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学校種別 | 幼稚園 |
地域 | アメリカ、ニュージャージー州 |
内容 | 募金活動期間の最終日に、パジャマを着てくる。パジャマ1組ごとに1冊の本が一緒に、恵まれない子供に寄付される |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 for a cause:募金・寄付活動、制度啓発・推進 |
効果・変化 | ・自分たちの学校が寄付したパジャマと同じ数の本が一緒に寄付されることにより、人を助けることを経験する ・パジャマを着て寄付活動をすることにより、より活動がたのしくなる ・興奮して一体感を得られる ・寄付を必要とする同世代がいることを認識し、助ける喜びを感じられる |
Colonial Elementary SchoolのPajama Day【米国】
米国のColonial Elementary Schoolで行われているPajama Dayでは、子ども病院への寄付金や入院患者へのパジャマの寄付を募りました。目的は、寄付によって小児医療を改善し、無数の子供たちの命を救う医学的発見と革新を期待することです。
実際、生徒たちは学校へパジャマを着て登校し、募金だけでなく、冬用の暖かいグッズやパジャマを寄付しました。その結果、学校が設定した金額を上回る寄付金が集まったほか、子どもたち主体で集めた冬の暖かグッズにより、入院中の子どもたちにパジャマを届けることができました。
学校名 | Colonial Elementary School |
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学校種別 | 小学校 |
地域 | アメリカ、ペンシルバニア州 |
内容 | 学校へパジャマを着て登校すると同時に募金や冬の暖かいグッズやパジャマを寄付する |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 for a cause:募金・寄付活動、制度啓発・推進 |
効果・変化 | ・子どもたちが主体となって取り組み、入院中の子供達にパジャマを届けることができた ・低学年の子どもにも、他の人の役に立つこと、コミュニティーに貢献することの大切さと価値を感じてもらうことができた ・子どもたちが、困っている人の役に立つ喜びや、笑顔になってもらうことの喜びを感じることができた |
Rotherglen Elementary School(小学校)のPajama Day
カナダのRotherglen Elementary Schoolでは、Pajama Dayに生徒たちがパジャマを着て学校へ登校し、子どもガン基金に寄付するための募金活動を行いました。たくさんの寄付を募る機会となったほか、愛校精神を示すことのできる1日となっています。
学校名 | Rotherglen Elementary School |
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学校種別 | 小学校 |
地域 | カナダ |
内容 | パジャマを着て学校へ登校し、子どもガン基金に寄付するための募金活動を行なった |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 for a cause:募金・寄付活動、制度啓発・推進 |
効果・変化 | ・子どもたちと家族が募金活動に参加し、たくさんの寄付を募ることができた ・良い目的に対する学校の精神を示す機会となった |
for a cause:制度啓発・推進
McLean HighSchool(高校)のPajama Day
アメリカのMcLean HighSchoolでは、Pajama Dayに生徒たちがパジャマを着て登校することで、小児がん患者を称えています。生徒たちがみなパジャマで1日を過ごすことで、一体感を感じ、コミュニティとしてより大きな支援ができることを知る機会にもなり得ます。
また、単にパジャマを着用するのみで終わらず、周辺の学校へも働きかけるなど、各自がその後の行動へつなげていくことが重要視されており、多くの子どもが小児がんについて知り、考え、行動するきっかけづくりにもなっています。
学校名 | McLean HighSchool |
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学校種別 | 高校 |
地域 | アメリカ、バージニア州 |
内容 | 学校にパジャマを着て登校することで、小児がん患者について意識する。周辺学校へも働きかけ、多くの子どもが小児がんについて知り、考え、行動するきっかけを作る |
動機 | fun & spirit:楽しさ、校風、愛校心 for a cause:募金・寄付活動、制度啓発・推進 |
効果・変化 | ・多くの生徒がパジャマで登校し、小児がんへの意識を高め、他の人にも奨励する活動への興味を持った |
これまでのテーマが見直される動きもある
海外では、募金・寄付活動や制度の啓発・推進を目的とするSpirit Dayが数多く開催されています。しかし実は、一部では従来のSpirit Dayに反対の声があがっています。
例えば、「特定のコスチュームが文化的に不適切である」「学生間の不平等を助長する可能性がある」といった意見によって、Spirit Dayの実施方法やテーマの見直しが求められることもあります。
ここからは、特定のテーマの日に対する反対意見や反対活動をいくつかご紹介します。
保護者の立場から反対意見が集まったSpirit Day
Cross Dressing Dayへの反対例 -1【米国】
2013年にアメリカ、ミルウォーキー州の小学校では、仮装を楽しむ1週間の最終日に、生徒会が選んだテーマとして「Cross dressing day(異性の服装で登校する日)」、つまり「Gender-Bender Day」を予定していました。
しかし、一部の保護者からの反発を受け、学校側は内容は変えず、名称のみ「Switch It Up Day(服装を切り替える日)」に変更しました。その結果、Switch It Up Day当日に参加した生徒は数名で、異性の服装と入れ替えることを実行したメンバーは教師などの大人のみでした。
学校名 | Milwaukee Elementary School |
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学校種別 | 小学校 |
地域 | アメリカ、ミルウォーキー州 |
テーマ | Cross dressing day(Gender-Bender Day) |
内容 | 異性の服装を着て登校する |
経緯・結果 | ・保護者は子どもが異性の服を着て学校へ行くことへの抵抗を訴え、論争が起きた ・当日、異性の服を着て登校した生徒はほとんどおらず、テーマの日の適切性が問われる結果となった |
参考:
【英サイト】School-sponsored cross-dressing day at elementary school causes controversy|DAILY CALLER
【英サイト】Cross-Dressing Day Causes Stir at Milwaukee Elementary School|THE CHRISTIAN POST
Cross Dressing Dayへの反対例 -2【米国】
2019年にアメリカ、ノースカロライナ州の高校でも、Spirit Weekの一環として、生徒会がGender-Bender Dayとして「Cross dressing day(異性の服装で登校する日)」を設けましたが、保護者などによる懸念や反対により、やはりテーマを変更しています。
学校側は何年も実施してきたことであり、誰かを不快にするためのものではなく、生徒が楽しむためのものであると主張しましたが、公立学校が異性装を促進することに反対する保護者や、「LGBTやノンジェンダーの子どもたちに対して無神経だ」という抗議がされ、生徒会はテーマをキャンセルすることとなりました。
学校名 | Reid Ross Classical High School |
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学校種別 | 高校 |
地域 | アメリカ、ノースカロライナ州 |
テーマ | Cross dressing day(Gender-Bender Day) |
内容 | 異性の服装を着て登校する |
経緯・結果 | ・一部の保護者が、公立学校が異性装を促進することに反対 ・「LGBTやノンジェンダーの子供達に対して無神経だ」という抗議があった ・生徒会はテーマを変更し、Cross dressing dayは行われなかった |
参考:【英サイト】High school cancels controversial ‘Gender-Bender’ homecoming spirit day|abc30.com ACTION NEWS
Spirit Day全般への反対例【米国】
学校文化として「生徒に楽しい1日を過ごしてもらうこと」が目的だったはずのSpirit Dayがエスカレートし、保護者からの反対意見が増えています。ときどき行われるPajama Dayぐらいであれば、大人も子どもも気軽に楽しめるかもしれません。しかし、月に何回も「〇〇の日」が開催されるとなれば、毎日のお弁当や水筒の用意に加え、「テーマに必要なグッズや洋服が揃っているか」に神経を使うことになり、保護者の負担は大きくなります。
しかし、ストレスを感じながらも、「我が子だけ洋服やグッズを用意がなければ肩身の狭い思いをする」と思うと保護者らは準備せざるを得ません。過度に行われるSpirit Dayは、その意味合いが本来の文化的・精神的な理由からかけ離れてきているため、「回数を減らしてほしい」「開催しなくていい」という意見が出ている状況です。
学校種別 | 小学校 |
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地域 | アメリカ |
テーマ | Spirit Day全般 |
内容 | 全員で同じ服を着たり、同じテーマに沿った持ち物を準備する |
経緯・結果 | ・テーマの日が増えすぎたことで、対応しきれない保護者がいた ・保護者だけでなく、子ども自身も頻繁に周りと合わせることに対してストレスを感じていることがあった ・学校側に対し、そのような意見を保護者から伝えることとなった |
参考:【英サイト】Why Spirit Week is a Problem|education world
生徒視点での反対意見が集まったSpirit Day
Spirit Day全般への反対例【米国】
当然ながら、Spirit Dayが必ずしも全生徒に喜ばれているわけではありません。参加しづらさを感じたり、着るものを用意する余裕がなく、負担に感じている場合もあります。一体感ではなく、逆に排除感や孤独を感じてしまう生徒がいることが顕在化され、問題となっています。
これに対して近年アメリカでは、全員で同じ服を着たり、同じテーマに沿った持ち物を準備しなくても、ボランティア活動やアクティビティ、アートや工作の校内展示など、学校全体で盛り上がる方法が提案されています。
学校種別 | 小学校、中学校、高校 |
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地域 | アメリカ |
テーマ | Spirit Day全般 |
内容 | 全員で同じ服を着たり、同じテーマに沿った持ち物を準備する |
経緯・結果 | ・テーマに合わせた服や持ち物の準備が、生徒たちの負担になっていた ・Spirit Dayが一体感ではなく、排除感や孤独を感じさせていた ・誰もが参加しやすく、学校全体で盛り上がる方法として、ボランティア活動やアクティビティ、アートや工作の校内展示などが提案された |
参考:【英サイト】Why Spirit Week is a Problem|education world
おわりに
本記事では、海外の学校で実施されているSpirit Dayをまとめてご紹介しました。募金や制度啓発、愛校心を育むことを目的に取り組まれているSpirit Dayが多くある中で、過去の事件をきっかけとする国全体でのSpirit Dayや、先生が生徒たちを想って「学校という場所をリラックスして楽しむために」と行われているものもあります。そして最近は、環境問題や多様性・包摂性をテーマにしたSpirit Dayが増えているようです。
日本の学校でも、海外の「Spirit Day」にインスパイアされた取り組みとして、文化祭や体育祭でクラスごとに同じ色の衣装を着る機会や、生徒を先生に立てて授業をおこなう動画を見かけますが、それらも一体感や愛校心を持ってもらうため取り組みといえます。
しかしながら、記事の後半でご紹介したように、「子どもに不適切だ」「孤独感を助長している」という意見が出るなど、中には保護者・生徒双方にとって負担が大きくなりすぎたSpirit Dayもあります。
Spirit Dayの本来の目的は、学生らに重要な社会問題について考える機会を提供し、行動を促すこと、あるいは楽しみや安心感を与えることです。目的を見失わず、時代に応じて形式を変えていかなければ、国内のPTA活動や学校・地域行事のように、縮小あるいは廃止されていくかもしれません。