関東在住。会社員として16年間働いたのち、フルリモート組織の「株式会社ナラティブベース」に参画。フリーランスとして働きながら、2021年10月より同社の取締役に就任。培ってきた業務改善スキルや子育てと仕事を両立するTipsをSNSで発信しています。
会社員として働くことに限界を感じ、フリーランスに転身した
16年間働いてきた会社を、やめようと思ったのはなぜですか?
会社を退職するまでは、産休・育休を二度経験して、正社員として計16年間働きました。長く働いてきたおかげで、会社で一緒に働くチームメンバーは旧知の仲となり、居心地がよく、業務の内容そのものも好きでした。会社の制度も待遇も当時としては充分でしたし、ハードでも仕事自体は好きでした。
しかし、「会社員」としての働き方に限界を感じていたんですよね。通勤時間も長く、毎月の残業も多かったので、週末には疲れ切って寝てばかりいました。子どもの話を聞いてあげられないし、ずっとイライラしていた気がします。制度としてあった時短勤務やテレワークを取り入れたりもしましたが、それだけでは育児との両立が楽にはなりませんでした。
もっと私のライフステージにフィットした働き方が他にもあるのではないか?それもあって、ナラティブベースの代表を務める江頭さんに「やめたら、お仕事ありますか?」と聞きに行ったんです。次は時間に縛られない働き方にチャレンジしたいと思っていました。会社員をやめて、これまでとは違う生活をしてみたい。「時間にしばられない働き方をしよう」とフリーランスへの転身を決心したのが、7年前です。
会社での時短勤務はどのようなものだったのでしょうか。
一人目の育休復帰後に時短勤務をしていました。とても良い会社で、仕事内容は自分の希望したとおりで、産前と変わらずに任せていただけました。ただし、時短勤務で産前と変わらぬパフォーマンスを出すのは、難易度が非常に高かったです。
自分史上最高のパフォーマンスで仕事を終わらせても、短くなった勤務時間の分だけお給料は減っていく。周囲からは「残業ができない人」という評価でしかなく、頑張りがどこにも伝わらない孤独感がありました。ただ、孤独ではありましたが、時短勤務を通じて段取り力や集中力などの力を、人知れずつけることができました。
それはキツイですね。会社員時代のテレワークはどうでしたか?
フリーランスとしてテレワークをするのと、会社員としてテレワークをするのとでは、まったくの別物でした。会社員としてのテレワークは、想像よりもハードでした。
大手人材サービス企業だったため、比較的早くからテレワークが試験的に導入されていました。テレワーク&フレックス勤務ができる、当時としては先進的な会社だったと思います。
しかし、会社員でしたから、雇用契約書に規定されている時間通りにきっちり働かなくてはいけません。その枠組みの中では、家にいても会社にいるときと同じように働く。子どもが学校から帰ってきても、夜までは充分に相手ができませんでした。
だから、夫も子どもも最初は家にいるのに喋りかけられないと、不納得な顔をしていましたね(笑)姿が見える分「冷たい」とも言われたし、わたし自身も家にいるのに子どもの相手ができないジレンマを抱えていました。会社としては労働基準法を遵守しなくてはいけないので、子どもが寝た後の深夜に仕事をすることも出来ず、何を優先したらいいのかが分からなくなって、パニック状態になることもありました。
「会社」という枠組みの難しさを感じましたね。
非専門職で会社員からフリーランスへの転身。まずは3年で自分の軸を見つけると決めていた
フリーランス転身後の道筋は先に考えていたのですか?
会社をやめる時点では、フリーランスになる自信はまったくありませんでした。また大前提として、会社員からいきなりフリーランスになれば収入が維持できないこともわかっていました。だから、ナラティブベースには3年だけお世話になって、その間に「今後自分がどういった分野でフリーランスとしてやっていけるのか」「どういった軸を持てるのか」を見極めるつもりでいました。
わたしが積んできたキャリアは、いわゆる非専門職だったんです。会社では業務改善や法改正等の対応に携わっていましたが、コーディングができるわけでも、デザインができるクリエイターでもなかった。でも、参画した頃のナラティブベースの事業は「Webマーケティングまわりの運用」がメイン。スキルを持っていない状態でお世話になるので、一から出直すつもりでいました。
ナラティブベースという集団で培われた「ベースライン」とは?
ナラティブベースには、実務経験が無い仕事も請けられる環境がありました。プロジェクトごとにチームを組むので、スキルや経験がある人がいれば、一緒に経験を積むことができます。もちろん、そのほかの面で自分の知識や経験でチームに貢献することが前提にはなります。お互いの持っている強みを相互に提供し合い、お互いに成長していくことができる形です。チームで働くことの利点であり、魅力ですね。
自分の趣味や得意な分野が仕事につながることもあります。例えば、会社員で営業を担当している人が絵を描けても「絵がうまいね」で終わってしまいますよね。でも、ナラティブベースでは「絵がうまいね。じゃあ、こんなのも出来るかもしれないね」と人から見つけてもらえます。それで実際に、グラフィックファシリテーターの資格を取得して活躍しているメンバーもいます。
このような「わたしはできないけど、あなたはできる」というのは、人と交わってこそ初めてわかります。会話から仕事につながる、この広がりもコミュニティの面白さですね。
ナラティブベースに参加してしばらく経った頃、お客様とお話しているときに前職のスキルを活かせる機会を見つけたんです。「それだったら、わたしが新しい業務フローを設計できます」とすぐに手を挙げました。そこから、わたしのいまの業務につながっています。
働き方の多様性、ワークライフインティグレーションの実現とは?
現在フリーランスとして取り入れているリモートワークは、すごく自由で気に入っています。
会社員時代とは違って、フリーランスのコミュニティでは、所属している方々の働く場所や働ける時間がそれぞれ異なるため、会議時間の設定一つでも、相手の事情に配慮しながら決めていきます。
会議や仕事がひと段落つけば子どもと話せるので、家族もわたしが家で仕事をすることに慣れてきたようです。「子育てと仕事の両方、できるじゃん!」と、罪悪感を抱かないで働けるようになりました。
リモートワークで家にいるから家族とすごく仲良くなれた、というわけではありませんが、子どもに目が届かないという課題は解消できました。いま、子どもたちは高校1年生・小学6年生、リモートワークのおかげで難しい時期は乗り越えられたと思います。
また、固定の拘束時間がないので、仕事の合間に買い物に行って晩ご飯を作ったりもできますし、子どもたちが寝た後にも働けるので、とにかく自由。それでいて、主体的に仕事にも関われています。
ライフとワークがゆるやかなグラデーションになったことで、「仕事をやめたほうが良いのでは」とは思わなくなりました。
最初に起きた変化として、「仕事か、仕事じゃないか」の境目がなくなってきたんです。お金を得るものとお金を得る以外のものの垣根がなくなってきたとも言えます。
フリーランスとして働くなら何をするか、ナラティブベースの事業を今後どうしていこうか、もしお金が足りなくなったときにはどうするか。「どうやっていこう?」と考えていくうちに、自分の考え方に変化が生まれていくのも楽しい。総じて、人生を楽しめています。
ライフ・キャリアプランを単線で思い描く時代は終わった
組織に属さないフリーランス集団だからこそ発揮できるバリューとは?
会社で働いていると、フリーランスのチームよりも内情が複雑になりがちです。それに比べて、フリーランスのコミュニティは情報がフラットなので働きやすい!
例えば、会社では部署ごと・職務ごと・人ごとに目標があるので、プロジェクトの達成を目指しながら、それぞれが別のミッションを抱えている状態となります。そうなると、プロジェクトだけを見て働くわけにはいかず、そのプロジェクトに対する力の入れ方も人によって大きく違ってきます。
一方フリーランスの場合は、プロジェクトごとに人を集めて、集まってくれた人たちを「まとめる」苦労はあると思います。わたしも当初は「フリーランスが集まると、バラバラで大変なのではないか」と想像していました。
しかし実際は、プロジェクトに参加する人のミッションはそのプロジェクトの成功・達成のみなので、仕事がしやすいんです。余計な思惑はなく「プロジェクトの目的」が共通言語となるので、非常にシンプルなのが良いのでしょう。ナラティブベースでは「まとめる」苦労はあまり感じていないですね。
また、価値観や学歴・経歴が似ている人が集まりやすい会社に比べて、フリーランスのチームにはまったく違うバックグラウンドを持つメンバーが集まるという楽しさもあります。
その分、「これはああしてね」といった文脈だけでは伝わらないので、認識のすり合わせからスタートしなければなりません。すべてにおいてフラットなんです。お互いが尊重しあうからこそ、心地よく働けて、会社も含めて、皆で変化しながら成長していけるところも、とても良いと感じています。
フリーランスとして働くために大切なことは?
会社員として一般的な経歴しか持っていなくても、フリーランスにはなれます。
自分のいままでの経験や「私にはできない」という固定観念から飛び出せる人にはフリーランスが向いていると思います。また、自由に働ける イコール ずっと同じ仕事をするという意味ではないので、常にアンテナをはり続けられるのも強みとなります。
わたしも会社を辞める前には、培ってきたスキルをフリーランスになってからも活かせるとは想定していませんでした。正直スキルの棚卸しは苦手で、いまも「あなたは何をしているのですか?」と聞かれると、うまく答えられません(笑)でも、常にアンテナは張ってきました。いますぐ出来ることはなくても、少しずつ片鱗に触れていたのだと思います。
そして、出来そうなことがあれば手を挙げつづけたからこそ、「いまの働き方」をつかめました。
思い返せば、ナラティブベース代表の江頭さんとの出会いは、会社員時代に参加したmixiの「ママのキャリアを考える会」というコミュニティでした。コミュニティに参加して、座談会にも参加して、非専門職ではなくても働き続けられるのかを知りたいと思っていました。このときもアンテナをはっていたんですね。
次世代のキャリアのありかたはどのように変化するのでしょうか?
事務職などの非専門職であれば、どのようなキャリアを描いていくのが最適か。考えてみましたが、絶対にこれなら大丈夫という解があるわけではありません。でも、長期的に俯瞰したほうが幸せである、というのは一つの答えだと思っています。
子どもを産むと働ける時間が物理的に減るし、働かない期間もあります。会社によっては昇進が難しい場合もありますし、「産休・育休をとって同期に1・2年キャリアの遅れをとっている」と考えると、つらい。
子育てと仕事を両立していくうえで気をつけて欲しいのは、価値観にとらわれて、視野を狭くしてしまうことです。「いまの会社」でのキャリアだけを考えるのも、価値観にとらわれていると言えます。
複線で長期的にキャリアをデザインすれば「幸せ」につながる
同じ会社で働き続けるキャリアイメージは、単線です。その会社で働く5〜10年という短期間のキャリアだけで考えず、キャリアは複線で長期的に考えていくほうが良いです。
「いまの会社だけ」で考えてしまうと、想像できるキャリアから外れたり遅れたりするとつらいし、ポキッと折れてしまう可能性もあります。
仕事を辞めたいと思ったとき、わたしが所属しているコミュニティが会社しかありませんでした。「ここから外れて、どうやって生きていこう」と会社から離れるのがすごく不安だったのを覚えています。
けれども、ここじゃなくても良いとわかると、気が楽になりました。1つしかないから不安になるんです。単線ではなく、複線で考えるとキャリアも視野も広がっていくはずです。
子どもと生活するなかでも人は成長しています。お金を得る仕事をして、そこで得た知識・情報を発信して人とつながっていくことからも変われます。
わたしもいまは変わることを恐れないで、それ自体も楽しむことで、幸せな働き方ができていると思います。幸せに働くことが、アクティビティーになっているのかもしれません。