「結婚する・しない」でもらえるお金はどう変わる? 法律婚にこだわらないカップルのメリット・デメリットとは

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必ずしも「法律婚」を選択せず、「子どもが生まれるまでは籍を入れない」「結婚というかたちに縛られたくない」と考えるカップルが増えてきています。性別を問わず、「パートナー」として申請できる自治体もいくつかあるほか、データを見ると、2022年・2023年の国内の婚姻率は4.1と、法律婚が減少傾向にあることがわかります。(参考:「男女共同参画白書 令和4年版」男女共同参画局

そこで今回は、「結婚するか、しないか」によって、どのようなメリット・デメリットがあるのかを深堀りしたいと思います。記事の後半では法律婚をしたカップルとそうではないカップルとで、1年間の収入にどのくらい差があるのか、本当に結婚しなければ損なのかにも注目しました。これからの結婚のかたちを考えていく上でのヒントになれば幸いです。

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これまでの日本の家族構成と現代の結婚観

日本では入籍届を出し、夫婦いずれかの戸籍に相手が加わる「法律婚」こそが、カップルの理想のかたちとされてきました。また、1990年以前は働く夫と無職の妻という家庭の割合は、共働き家庭よりも多く、それゆえ「君の味噌汁が毎日食べたい」というプロポーズが成立していました。

しかし、物価高による貧困、多様性の考え方の浸透といった影響もあって、その比率は現在逆転しています。10年ほど前から共働き家庭は年々増え続け、「専業主婦」のいる家庭数を今では大きく上回っています。

近年の調査によれば、「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合は減少し、「一生結婚するつもりはない」という回答は2002年以降、右肩上がりで増えている状況です。(参考:出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査):国立社会保障・人口動向研究所

なぜ、「法律婚」を望む人々が減少したのか。これまでの結婚が受け入れられなくなった要因を探っていきます。

妻=嫁=所有物という考え方

これまでの日本における夫婦のかたちは、「亭主関白」「寿退社」「専業主婦」といった言葉とともにありました。また、女性が結婚することを「嫁ぐ」、男性が結婚することは「娶る」と表します。「女が家に入る」と「女を取る」というこの漢字のみを見ても、夫は妻との新たな家庭を築くのではなく、「家の物になった女性は、男性の所有物として扱って構わない」という男尊女卑の文化や性差別的な価値観がうかがえます。

そのような考え方では、夫婦関係が平等になるわけがないのですが、この問題は現代にいたるまで脈々と続いています。例えば、季節の行事において、男性側の家の都合を優先することが当然とされたり、跡継ぎとして長男を生むことを求められたり、人権・尊厳を傷つける例を挙げるときりがありません。

しかし、女性の自己決定権や個人の尊厳を無視した関係のままでは、法的な婚姻関係があろうとなかろうと、平等な関係を築くことが難しいのは明らかです。

近代化による、夫婦の形の変化

本来、結婚は相互の尊厳と自由意思に基づく関係とされています。したがって、夫婦が互いを尊重し、平等なパートナーシップを築くかたちが「結婚」だとすれば、法律婚以外のかたちでも成立するのではないでしょうか。

実際、入籍届を出さずにともに生きていく「事実婚」や、最初に契約条項を2人の間で決めておく「契約婚」もあります。

また、欧州では1999年にフランスでPACS(パックス)と呼ばれる、異性間・同性間どちらでも結ぶことのできるパートナーシップ制度が導入され、広まっています。解消しやすい契約でありながら、結婚と同等の優遇措置が認められる点がこの制度の特徴です。(参考:PACS(連帯市民協約)|在フランス日本国大使館

入籍しないまま暮らすことで、手続きの手間が多少かかることは想定されますが、その手間も生活に必要な諸手続きの1つだと考えれば、意外とデメリットは多くないかもしれません。

ここからは、あえて結婚しなかった場合に、どのようなメリット・デメリットがあるのかをご紹介します。

あえて結婚しない2人のメリット・デメリット

パートナーと過ごす中で、将来的に「結婚するか・しないか」を考える方も多いのではないでしょうか。ここでは、法的な婚姻関係を結ばず、パートナーとの生活を続けていく場合、実際にはどのようなメリット・デメリットがあるのかをまとめました。

メリット
  • 結婚に関する法的な手続きや費用が不要となる
  • 自由な関係形態を選択できる(自由な時間や個人のスペースが保たれる)
  • 結婚による責任や縛りがないため、個々の目標や趣味に集中することができる
  • 経済的な負担が軽減される可能性がある
デメリット
  • 法的な保護や権利の制限がある
  • 結婚によって得られる法的な保護や相続権がないため、将来的な不安やリスクが増える可能性がある
  • 社会的なプレッシャーや家族の期待に対する対応が必要になる場合もある

従来は法律婚でなければ難しかったことも、契約書の作成やパートナーシップの申請によって、実現できるようになってきました。やはり手続きの手間はかかるものの、「結婚しなければ絶対に認められない」ことは、制度面では減ってきています。

参考:
くにたちパートナーシップ制度|国立市
墨田区パートナーシップ宣誓制度|墨田区
「神戸市ライフパートナー制度」が始まります|神戸市

なぜ「結婚をしたほうが良い」と考えられているのか

結婚するメリットについて、国立社会保障・人口動向研究所の調査によれば、「精神的な安らぎの場が得られる」「自分の子どもや家族をもてる」という回答率が高かった一方、「経済的に余裕がもてる」「社会的信用を得たり、周囲と対等になれる」という回答も一定数ありました。(参考:出生動向基本調査 (結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口動向研究所

なぜ、そのようなメリットが法律婚にはあると認識されているのでしょうか?
ここでは、先ほどご紹介したメリット・デメリットを深掘りすべく、「結婚しなければ損すること」を、以下の3つに分類しました。

結婚しなければ損すること
  1. 銀行、年金、契約関連(財産)
  2. 病院等、緊急時 そばにいることができないこと
  3. 子ども関連

上記の3つについて、現在の制度状況と、結婚していない場合はどのような手続きによって問題を解決できるのかを解説していきます。ただし、前提として自治体やそれぞれの状況によっては記載の内容どおりとはいかない場合もあります。詳細については、お近くの自治体の窓口やホームページ掲載内容等をご参照ください。

銀行、年金、契約関連(財産)の制度

結婚した場合の税制の優遇措置

結婚した夫婦が所得税や贈与税などの税金面で特典を受ける、税制の優遇措置があります。ただし、これらは個々の所得や家庭の状況によって異なります。

  • 配偶者控除
    入籍している夫婦に対し、所得税の課税基準から一定の金額を控除する制度。一方の配偶者の収入がない場合、もう一方の配偶者が収入に応じて一定の金額を控除できます。
  • 扶養控除
    結婚した夫婦が扶養している家族の人数に応じて、所得税の課税基準から一定の金額を控除する制度。16歳以上の子どもなどが対象となります。

税額控除については、入籍しているかどうかが焦点となるため、事実婚の場合は認められません。

夫婦の共同財産制度

結婚した夫婦が婚姻期間中に獲得した財産は「共同財産」と呼ばれます。この制度に基づく場合、夫婦は財産を共有し、それぞれの財産が共同財産となります。

この共同財産制度には、次のような問題が生じる可能性があります。

  1. 財産の分割
    夫婦が離婚する場合、共同財産の分割が必要になります。財産の評価や分配方法によって、夫婦間での意見の相違や対立が生じる可能性があります。
  2. 借金の責任
    共同財産制度では、夫婦が共同で責任を負うことになります。したがって、片方の配偶者が借金を作った場合、もう一方の配偶者も責任を負うことになります。
  3. 相続問題
    共同財産制度に基づく場合、一方の配偶者が亡くなった場合、財産は生存している配偶者によって相続されます。これにより、他の家族や相続人との間で相続に関する問題が生じる可能性があります。

結婚によって得られる法的な保護や相続権がないため、将来、パートナーの死亡や関係の解消によって生じるリスクや問題があるため、それらに対処する必要があります。自治体によってはパートナーシップの申請によって、確認書受領証、公正証書等受領証などが交付されるため、それらに基づき相続や財産分割を行える場合もあります。

一方で、夫婦の共同財産には、財産分割や借金の責任、相続問題などが関連しているため、夫婦が結婚していない場合にはこれらの問題を回避できる、という捉え方も可能です。

社会保険

社会保険に関しては、税額控除に比べると柔軟な対応が行われており、生計を同一にしているパートナーであることを証明できれば、結婚している場合と相違なく保証を受けられる仕組みとなっています。

ただし、健康保険や年金の受給、相手の医療情報へのアクセスなどは入籍している場合に比べ、制約される可能性があるため、公正証書を用意するなど、事前の手続きは不可欠です。

  • 健康保険
    「住民票と公正証書」があれば、夫婦であることを証明できます。住民票においては、事実婚の状態でも「未届の妻(夫)」と記入することが可能です。
    また、事実婚の契約書を公正証書にしておくとよいでしょう。互いに戸籍上の配偶者がいないことや、事実婚の状態を証明することが必要です。ただし、保険会社によって対応が異なります。
  • 国民年金・厚生年金
    配偶者が会社員の専業主婦は、第3号被保険者として認定されるため、保険料の支払いが免除されます。
    また、30歳から59歳まで夫の扶養に入っていた場合、65歳以降は年間90万円程度受け取れるとされています。

歳の差のある夫婦で、夫が支給開始年度以前に死亡した場合には、数年にわたり、無収入で生活しなければならない可能性もあります。また、納税者数の減少を踏まえると、今後さらなる支給額の減額もあり得ます。

また、扶養を外れた場合、毎年支払いが発生しますが、収入次第では第3号被保険者よりも、1年あたりの支給額は少なくなる場合があります。

結婚していないカップルが申請可能な制度

  • 同居人契約
    この契約を結ぶことで、財産分割や相続、財産管理などに関するルールを定めることができます。
  • 共同財産契約
    この契約では、財産の共有や分割に関するルールを定めることができます。

【銀行、年金、契約関連(財産)制度のまとめ】

  • 法的な規制のある税金関連については、結婚していない場合は受けられない控除等があります。
  • 自治体や保険会社が相手となる手続きに関しては、パートナーとの関係を証明することができれば、結婚した場合と変わらない対応を受けられる場合が増えています。
  • 給料に含まれる「家族手当・配偶者手当」なども法的規制がないため、企業によっては支給される可能性があります。

病院等、緊急時にそばにいることができない

結婚していないカップルが受けられる制度

  • 医療措置への同意
    事実婚カップルは、パートナーへの医療措置について同意することができます。ただし例外もあるため、具体的なケースに応じて専門家への相談をおすすめします。

子ども関連

結婚していないカップルに子どもが生まれた場合の手続き

事実婚など、結婚していないカップルに子どもが生まれると、法的な観点では以下のような手続きが必要となります。また、「サポートをどのように得るのか」「周囲の声への対応をどうするか」などを話し合っておくことも重要です。

  1. 出生届の提出
    子どもが生まれた後、地域の役所に出生届を提出する必要があります。出生届には子どもの基本情報や親の情報が含まれます。
  2. 子の父親の認知
    法的な婚姻関係が存在しないため、子どもの父親として法的に認められるためには、親子関係の確立手続きが必要になる場合があります。具体的な手続きや条件は、地方自治体によっても異なります。
  3. 相続権や養育費の取り決め
    結婚によって得られる子どもの相続権や養育費の権利がないため、将来的に問題が生じる可能性があります。別途、取り決めを行うことが重要です。

また、現在は生殖補助医療、いわゆる不妊治療を受けられるのは法律婚の夫婦に限定されています。事実婚など、入籍していないカップルのほか単身で子どもを持ちたいと考えている人は対象となっておらず、変更を求める声があがっています。

参考:「法律婚以外の人も生殖補助医療の対象に」当事者団体が超党派議連に署名1万筆を添え新法骨子案の見直し要望|東京新聞

結婚の有無で、受け取れる金額にはどの程度の差が出るのか

ここまで、結婚しないカップルにまつわる制度上の課題と解決策等をご紹介しました。この章では、結婚の形態によって、受け取れるお金の差がどのくらい生まれるのかに焦点を当て、解説していきます。

前提:想定したカップルの構成パターン

前提として、今回は国内では特に婚姻率の高い東京都内で、杉並区に住んでいる方をモデルにしています。いずれも世帯年収は600万円とし、結婚の有無を加えて計6つのパターンに分けました。後ほど、3歳の子どもがいるケースとも比較しています。

なお、年収については賞与や手当については考慮せず、毎月一律の給与が支給されていると仮定して計算しています。

「結婚している・していない」6パターンの年間収支比較

1人あたりの年間収入を「給与収入ー所得税ー社会保険料(健康保険料+厚生年金保険料)ー住民税」で計算しました。そして、2人分の合計を1番下に「年間収入合計(A+B)」として記載しています。

結論として、ある程度の収入を2人ともが稼いでいる場合、結婚しているかどうかは、受け取れる金額には影響しません。また、収入の差を除けば、結婚しているかどうかによって変わる金額は世帯年収600万円の場合、10万円ほどです。

ご覧のとおり、現状では結婚しており、一方が扶養の範囲内で働いている場合(⑤)が最も収入が多い状態になっています。これは、扶養内で働いていることで、一方の納税金額がおさえられていることに加え、結婚しているため、所得税・住民税において「配偶者控除」が適用されているためです。

⑥については、扶養内の金額ではあるものの、結婚していないことにより税制上の優遇措置が受けられず、このような金額になっています。

反対に、最も少なかったのは、一方の収入がなく、結婚していない場合(④)です。こちらは、⑥と同様の理由に加え、Aの収入がほかの組み合わせに比べると高いことにより、所得税・住民税の税率が上がったことが影響しています。

「子どもがいる」と仮定した場合の年間収支比較

続いて、「3歳の子どもが1人いる」と仮定した場合をご説明します。

子どもに関する税額控除は主に「16歳以上の子どもがいる場合」に適用されます。そのため、年収に関しては、乳幼児がいる場合も「児童手当分」の差しか発生しませんでした。児童手当は、児童に対して一律で支給されるため、結婚の有無への影響は大きくなく、家庭にとっては年額12万円程度のプラスとなります。

なお、今回は3歳の幼児が1人いる場合を想定しましたが、出産時には一時金のほか、育児休業給付金なども受け取ることが可能です。いずれも「結婚する・しない」に関わらず、児童がいる場合に発生するため、今回は加算していません。

結論:金銭の差はそれほどない

結婚しているか、していないかによって、受け取れる金額の差に注目した結果、現状の制度上、共働き家庭として、2人が同じくらいの収入を得ている場合よりも、1人はフルタイムで働き、もう1人が扶養の範囲内で働くほうが所得税・社会保険料が免除され、配偶者控除の適用も受けられるため、年収の総額が増えることがわかりました。

また、2人が同じくらいの収入を稼いでおり、配偶者控除の対象外となっている場合は、結婚の有無による金額の差は見られませんでした。したがって、金銭面のみを見れば、フルタイム・共働きカップルの場合は、結婚しなくとも損することはないと言えます。また、一方の収入に頼るかたちよりも、共働きである程度収入があるほうが、パートナーとの関係を解消した際の不安などが解消できます。

意外だったのは、一方が高収入で、一方が無職のカップルのパターンです。結婚していない場合は納税額が高くなり、共働きの家庭よりも年収の総額が大きく減ることになります。これは、所得税に関して超累進課税制度(課税所得が高くなるほど、税率が高くなる)が適用されることが影響しています。結婚している場合は、配偶者控除によってむしろ低減されるため、あくまでも金銭面のみを考えると、専業主夫/主婦のかたちを選ぶならば、結婚しておくほうがお得です。

ただし、こうした状況を踏まえ、現在、配偶者控除等の見直しが進められているほか、入籍しているカップル向けに自治体が行っている新婚生活助成キャンペーンなどもあります。結婚の有無自体よりも、「どこに住むのか」「手続きを手間に感じないか」「年収への影響を考えるか」といったポイントで話し合った上で決めても良いかもしれません。

まとめ:考えられる未来のかたち

「法律婚」を必ずしも選択しなくてもよい時代になってきました。結婚しないまま暮らすことで、手続きの手間が多少かかることが想定されますが、その手間も生活に必要な諸手続きの1つだと考えればデメリットとは言い切れません。

ビジネスシーンでは、フリーランスとして一人ひとりが自立した上でともに働くかたちが増えてきました。結婚においても、個人の価値観やライフスタイルに合った選択をすることが、今後は当たり前になっていくかもしれません。

また、「結婚しない」ことで得られる軽やかさは大きなメリットといえます。それぞれが経済的にも精神的にも自立した状態でパートナーとなることができれば、まさに「対等」な関係性を保ったまま、支え合って暮らしていくことができるのではないでしょうか。

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もえこのアバター もえこ 在宅ワーキングマザー

兵庫県在住。小学生2人を育てながら、現在ほぼフルタイムで在宅ワーク中。趣味は推し活と読書。

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