現役農家が教える農業移住を成功させるポイント

豊かな自然の中で仕事に追われるのではなく、静かに自分らしい生活を送る。そのようなライフスタイルを目指し、農業への就農や地方移住を志すかたも数年前に比べると増えてきているように感じます。兼業農家である僕も思い切って「専業」農家になろうかなと考え始めているように、各々がライフスタイルを見直そうとしているのかもしれません。そこで、この記事では「農業移住」を考えている人へ向けて、支援制度や方法をご紹介します。

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農業を仕事にするには3つの選択肢がある

まず、「農業移住(就農)」をする際には、大きく分類して3つの選択肢があります。  

  1. 新たに経営を始める
  2. 雇用されて農業で働く
  3. 親や親戚の農業を継ぐ

また、作物ごとにより農業経営の方法や仕事の内容、使う道具も変わります。国内生産額の約6割が耕種農業で、残り約4割が畜産です。つまり農業は土を耕して作物を育てる耕種農業と家畜を育てる畜産の大きく2つ分けられます。耕種農業には、コメ、野菜、果樹などが含まれ、畜産には、牛、豚、鶏などに分かれています。自分の将来像を見据えつつ、選択していくことが大切です。

【分類】

  1. 耕種農業(米、野菜、果物など畑作からビニールハウス栽培など)
  2. 畜産農業(牛・豚・鶏などを育てて出荷する仕事)
  3. 農業サービス業(苗を育てる、野菜や果物の選別をするなど栽培から出荷の一部を請け負う仕事)
  4. 園芸サービス業(植木業や造園業など)

次にゼロから農家として起業したいのか、既存の農家に就職したいのか決めます。「農業次世代人材投資資金」が新規就農を想定しているように、起業か就職かで受け取れる支援金も変わってくることも考慮してみてください。

ゼロから農家として起業する

自分で農地を取得し、自分の好きな作物を育て、自分の責任で農業を営み、ひとりの農家として独立できるのがゼロから起業する方法です。「農業次世代人材投資資金」を受け取れるため、金銭面でもメリットは大きいです。

といっても、完全な初心者が移住後すぐに独立農家となるのは現実的ではありません。作物を育てるためのノウハウはもちろん、どのような農業機械が必要なのか、そもそも農地を取得できるのかなど、わからないことだらけだと思います。農業大学校に通い知識を身につけるか、独立を前提に既存の農家に教えてもらうなど、いずれにせよ、農地の取得に関する打ち合わせや支援金の相談も兼ねて、自治体との密なコミュニケーションと確認が必要でしょう。

既存の農家に就職する

独立起業を目指すよりも、よりハードルの低い形で農業をはじめられるのが、既存の農家への就職です。方法は求人を探して応募するだけで済みます。知り合いがいれば直接コンタクトを取ることも近道でしょう。採用され移住して実際に就職した後は、その日から農家として暮らしていけますし、まだ何の知識もない方も安心して就農できると思います。

加えて「移住支援金」の対象となる求人に絞って検索することで、最大100万円の一時金も受け取れるようなので、やり方次第では、引越し費用をそのままペイすることも可能です。

ただ、いきなり起業か就職かといわれても、なかなか判断ができないかもしれません。その場合は「自分の理想とする農家の形」だけ決めておき、実際に農家の方や自治体担当者と相談して決めて良いと思います。

お金のこと 面倒がらずに支援制度をしっかり活用しよう

農業を生業とする上で、作物を育てて終わりではなく販売する必要があります。農協に加入するなど、自治体や先輩農家と相談しながら生計を立てていくことになりますが、いきなり高額な収入を得るのは難しいです。住居費なども含めさまざまな支出に備えておくためのお金が必要ですが、農家として軌道に乗るまでは、農業次世代人材投資資金など支援金が大きな助けとなります。

現在、地方創成の一環として、国や自治体が移住を推進するための支援制度がいくつかありました。種類は多岐に渡りますが、代表的なのものを5つあげます。

農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)

これから本格的に農家となりたい若者(原則49歳以下)を支援してくれる制度で、就農前をサポートしてくれる資金「準備型」と、実際に就農した直後の助けとなる資金「経営開始型」を交付する支援金です。受け取れる金額など、それぞれの概要は以下の通りです。

準備型

支援金額最大150万円/年
期間最長2年間
想定対象都道府県が認める農業大学校などの研修機関で研修を受ける就農希望者

経営開始型

支援金額1~3年目=最大150万円/年、4~5年目=最大120万円/年
期間最長5年間
想定対象独立・自営した形で新規就農をする方

今から農業の勉強をしたい方でも対象となるのが嬉しいポイントです。しかも、給付金であるため返還する義務もないため農家移住を目指す方にとって心強い制度と言えます。なお、実際に受給対象と認定されるには細かな条件があるため、まずは都道府県や市町村に問い合わせる必要があります。

参考サイト:https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_kasituke/syunou_shikin/index2.html

青年等就農資金

新たに農業経営を営もうとする青年等に対し、農業経営を開始するために必要な資金を長期、無利子で貸し付ける青年等就農資金。18歳以上45歳未満の青年や、65歳未満のすでに知識や技能を有するものが対象となります。

無利子かつ長期にお金を借りられる制度で、借入限度額は通常3,700万円、償還期限は17年です。手元の資金が心もとない方であっても、大規模な農業をはじめられ、農地の改良や農業機械の購入など認められる使途も幅広く、重宝すると思います。

借り入れに当たっては事前に都道府県や市町村などに問い合わせする必要があります。

参考サイト:https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_kasituke/syunou_shikin/index2.html

農業近代化支援金

すでに農業を営むものが対象となり、「意欲ある農業者等が経営改善を図るのに必要な長期かつ低利の資金」を借り入れられる制度です。0.20%と低金利で償還期限は最長20年で個人の場合、通常1,800万円まで借り入れできます。移住して農業を開始したのち、いざというときのセーフティーネットとして覚えておきたい制度です。

参考サイト:https://www.maff.go.jp/j/g_biki/yusi/06/1_0603.html

移住支援金

東京23区に在住または通勤する方が、東京圏外へ移住し、起業や就業等を行う方に、都道府県・市町村が共同で交付金を支給する事業で主に東京23区で暮らしていた方が、地方で農家暮らしをはじめたいときに対象となります。受け取れる金額など、概要は以下の通りです。

対象移住直前の10年間で、通算5年以上かつ直近1年以上、東京23区内に在住もしくは、通勤していた方。
金額100万円(単身は60万円)
認められる移住先一部例外を除き東京圏外
条件移住先の中小企業への就職、テレワークによる移住前の業務の継続 、移住先で社会的起業などを実施のいずれかを満たすこと。

自治体のマッチングサイトを活用して移住支援金の対象となる求人を探し、応募する形が基本となります。

参考サイト:https://www.chisou.go.jp/sousei/ijyu_shienkin.html

地域おこし協力隊

都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの“地域協力活動”を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組みと定められている総務省の施策のひとつです。

地域おこし協力隊の定義は煩雑ですが、要約すると「都会から地方に移住し、その地域を盛り上げるための農業を含む仕事や活動を行う方」が対象となる支援金制度となります。(移住後に農家をはじめたい方も対象)

令和3年度には、国内で合計6,015人がすでに地域おこし協力隊員として活動していますが、注意点として、地域おこし協力隊の支援金は、個人が直接受け取れるものではないことです。隊員ひとり当たり「480万円」を上限に、国から自治体に向けて支援金が出ていて、自治体はこの支援金を活用しつつ、任用職員などの待遇で協力隊員を雇用しています。

つまり、「農業従事者の地域おこし協力隊」を募集している自治体に応募し、雇用(移住)されることで間接的に支援金の恩恵を受ける形になります。

参考サイト:https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html

このような移住で農家をはじめたい方を後押しする制度はたくさん存在しています。一昔前よりも、移住して農家となるまでのハードルは劇的に下がりました。田舎&地方移住で農家暮らしをはじめることは、単なる憧れではなく現実的な選択肢となっていると思います。

移住地域が決定したら住居を探しましょう。

移住先でどのような暮らしがしたいのかにより、一軒家か集合住宅か、賃貸か購入か、住まいのスタイルも変わってきます。地方都市部では住居の選択肢が比較的ありますが、町村などでは民間の不動産業者が存在しない地域もあり、住まいの情報収集にも時間がかかることがあります。

民間の住まい情報が乏しい自治体によっては、独自に空き家情報を紹介する「空き家バンク」を立ち上げて、地域内の空き家を移住者向けの住居として提供している例も増えています。住まい情報が少ない地域への移住を検討する場合は、「空き家バンク」も含めて自治体に情報がないか、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。

まとめ

のどかな田舎の自然の中で働きたい、農家を目指したいと思い憧れる方も多いですが、そこには田舎ならではの不便さもあります。電車やバスがほとんど走っていなかったり、最寄りのスーパーまで車で30分もかかったり。都会とはまったく異なる場所だと理解しておかなければなりません。

「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、自分からその土地に馴染もうとする努力も求められる場面や、ときには、都会ではあり得ない慣習に驚くこともあるかもしれません。またコントロールできない自然の影響を直接受ける農業ですから、目的と覚悟が明確でないと途中で志も折れてしまうかもしれません。

失敗の声も多い農家としての移住ですが、正しく対処法を理解しておけば恐れるものではありません。地方創生が進むなか、支援金の充実している今が移住を実現する大チャンスとも言えます。あらためて農業移住の目的をはっきりさせ、しっかりとした心構えを持ち移住することをお勧めします。

お役立ちリンク集

田舎暮らし志向

就農した方の声、全国就農支援サイトリンク集があります。

URL : https://www.maff.go.jp/j/aff_terrace/country/index.html

いいかも地方暮らし

移住の手引きを参考に。

URL : https://www.chisou.go.jp/iikamo/index.html

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AUTHOR

亀蔵のアバター 亀蔵 兼業農家COO

新潟市8行政区の中の「ハーベスト(収穫)イエロー」イメージカラーを持つ地区在住。美しい田園風景が広がる地で週末稲作兼業農家を営む。スキルアップと将来を見据え在宅ワークも生業にと考えNo frameにジョイン。農業の抱える問題について何かできることはないのか?ライターとして発信することを決意。楽しく人が集まる農業のあり方を追求し地域活性化を目指す!

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