共働き夫婦が家庭と仕事を両立するために必要な「関係性」と「余白」

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共働きの家庭が増えてきた昨今、「女は家事」という価値観が少しずつ薄れ始めてきました。しかし、それでもなお「育児との両立が大変」「疲れがとれない」「小1の壁を感じる」「夫が家事をしてくれない」「頼る人がいない」といった、両立の大変さをよく耳にします。

実際に、うまく両立できている家庭は存在するのでしょうか。そして、これから「育児家事と仕事をすべて両立できている夫婦」となるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。

この記事では、両立を達成するためにベストな育児家事、仕事の両立方法を検討し、そこにどのような前提条件があるのかも探っています。また記事の末尾には、現在の「バランスが取れていない」状況を変えるための方法として、外部サービスなども紹介しています。家庭の現状を見直し、もっと生活を楽しみながら生きていきたい、という方の参考になれば幸いです。

TOPIC

育児家事と、仕事の両立を達成している家庭とは?

まずは「両立できている」という状態がいったいどのような状態なのか、を考えてみました。

両立を達成している共働き家庭イメージとは?
  • お互いに不満がない状態現状に不平不満がない、あるいは少ない状態
  • どちらか一方が「しんどい」「大変だ」と思わなくてよい状態
  • 夜に休めば、次の日には体力が十分に回復できるような状態

このような状態が比較的保たれているならば、それは「育児・家事、仕事を両立できている」といえそうです。

反対に「相手だけが実現できている」「2人ともなんだかイライラしている」という状態の日が多ければ、夫婦間の育児・家事、仕事のバランスを見直す機会かもしれません。

両立を阻害するのは、日本の共働き家庭を取り巻く環境

家庭内にバランスの偏りが生じる大きな要因として考えられるのが、日本の夫婦を取り巻く環境です。残念ながら、男性よりも女性のほうが家事・育児を担う時間がかなり長い状態が続いています。

これまで、このような家事・育児にかける時間の格差は「男性が外で働いているから」だと言われていました。しかしながら、コロナ禍により在宅ワークが増えても、育児・家事を行う女性側の負担が減る様子はなく、むしろ増加しています。

そのような中で、前述したような夫婦でバランスよく育児・家事・仕事の両立を無理なく達成するというのは、非常に難しいはずです。

参考:
内閣府男女共同参画局,2020年7月「男女共同参画白書 令和2年版」

日本では家事・育児にかける時間の男女差が比べて大きい

実は、日本だけでなく世界的にみても、女性のほうが家事・育児といった家庭内での無償労働時間が、男性を上回る傾向があります。

しかも男性の有償労働の時間、つまり仕事をしている時間も長いため、その分女性側の家事・育児の負担が増大しているのだと考えられます。

総務省の2021年のデータによれば、日本では仕事の有無に関わらず、6歳未満の子どもを持つ家庭における1週間の家事関連時間の平均は、夫側が 1.54時間であるのに対し、妻側は 7.28時間と明らかに差が開いています。なお、この「家事関連時間」とは、家事のほか、介護・看護、育児、買い物を行った時間を指します。

参考
コラム1 生活時間の国際比較 | 内閣府男女共同参画局
総務省統計局,2022年8月31日「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要」

海外の男女の家事・育児時間の差が小さい国では多様な支援が行われている

一方で海外の、特に北欧の国々では、共働き夫婦に対して家事や育児の負担を減らすための政策が積極的に導入されています。

海外の支援事例
  • 社会保障の充実
  • 頼れる祖父母や行政サービス
  • 企業に義務づけられた福利厚生の充実

行政の支援例としては、育児休暇制度の整備や、保育園の普及による子育て支援、柔軟な勤務時間制度などが挙げられます。また、夫婦間の家事や育児の分担についても、公的なキャンペーンが行われ、男性側の参加を促す取り組みが進められているほか、退職した祖父母による積極的な育児サポートも行われています。

参考(各国の支援内容)

根深い性別役割意識(ジェンダーギャップ)も夫婦の両立を阻害している

日本の場合、性別役割意識が家庭内に無意識で持ち込まれていることも、夫婦での両立を阻む要因の1つといえます。地域や通う学校・園によっては、「母親の手作り品」「母親と子どもの行事」「父親と参加するスポーツイベント」というように、外部から性別による役割を提示されることも少なくないのではないでしょうか。

役割を分担した結果、家庭でのバランスが取れており、双方が納得できている場合はそれでも良いと思いますが、「なんだか納得がいかない」と感じるところがあるのであれば、そこに思い込みがある可能性を考えてみてください。

たいていの場合、外部からの働きかけに対しては、正直、意見を述べるぐらいしかできません。しかし、家庭内であれば話し合うことができます。

例えば、「男がやるものじゃない」「女だからこれぐらいできる」といった意識で相手に任せていること、任されていることはないでしょうか。無意識にジェンダーを固定した役割を生み出していないか、育児・家事の中身を分解し、見直してみるのもおすすめです。

参考
人間開発報告書 2021-2022年版 | United Nations Development Programme
内閣府男女共同参画局,2023年3月「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」
内閣府男女共同参画局,2021年9月「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」

両立を達成するための必須条件は「時間の余白」

昨今の、育児・家事、仕事をバランスよく行うのが困難な環境下で、それを夫婦で両立していくためには、夫婦2人とものメンタル(気力)が安定していて、十分な体力がある状態が必要です。

家庭と仕事が両立できている状態とは?
  • メンタル(気力)の安定
    【どのような状態か】
    • 不安や不満をため込んでいない
      • 日常の愚痴を適度に吐き出せている
      • 家事育児に関する不安を相談できる相手がいる(親族、友人など)
      • 不平不満を漏らしても、非難を浴びる恐れがない
      • 夫婦で頻繁に話し合えている
      • ときどき家事育児の分担を見直すことができている
    • 自分の意志で行動を選択できている。
      • 親族からの介入がない、あるいは介入を回避している
      • 夫からの家事育児に関する要求を受けていない
      • 夫から仕事への取り組み方に口出しされていない
    • 自分がしなくてはならないことのみに取り組むことができている
      • 仕事の時間を十分に確保できている
      • したくないことをしない選択ができる
      • したくないことをするように強要されていない
      • 許容量を超える仕事を受けていない
  • 十分な体力の保持
    【どのような状態か】
    • 休息をとることができている
      • 十分な睡眠時間が確保できている(現状の睡眠時間に満足している)
      • ひとりで過ごす時間を持てている
      • 家事・育児・仕事から完全に離れられる時間がある
      • 既定の就業時間外の出社やサービス残業がない
    • 家事・育児の負担が大きすぎず、ちょうどいい状態になっている
      • スマート家電などを活用し、家事にかかる時間を減らしている
      • 週に1回はシッターや家事サポートなどの外注を利用している

つまり、夫婦それぞれが無理をしていないことが大切になります。仮にいま、どちらかの気分が荒れ気味だったり、体調を崩しやすかったり、仕事上のタスクや、育児・家事などのタスクが山積みになっている場合には、その原因として「時間の不足」が考えられます。現状を打破するためにも、よく寝て体調を整える時間や仕事をスケジュールどおり、余裕をもって進める時間をつくれないかどうか、模索してみてください。

時間に余白が生まれると、どうなるのか?

「やる・やらない」「できる・できない」を選択し、実行していくことで「時間の余白」を生み出せます。それができれば、夫婦のどちらもが仕事面・精神面・金銭面に加え、時間のゆとりを持つことができている状態に一歩近づけるでしょう。

【例】時間に余白があれば叶えられる状態
  • 精神的負担が、問題のない程度である
  • 金銭面の余裕がある
  • 労働量に納得している
  • 自分の時間がある、休息がとれている

このような状態になれば、お互いや現状への不満や不平は自然と少なくなり、育児・家事にかける時間のバランスも納得のいく状態になります。

とはいえ、家庭ごとにベストなバランスや実現可能な両立方法は異なる、ということも忘れてはなりません。例えば「あの夫婦のように暮らしたい」「子育ても頑張りながら、もっと働きたい」と思っても、近くに頼れる親族やサポーターがいない状況であれば、2人だけでその理想を実現するのは非常に困難です。

また、現在の住環境、子どもの性格や年齢、そして夫婦それぞれの仕事の業種や、得意・不得意、気質によっても、うまくできるところ・できないところが発生します。

そこで、ここからは今後両立を叶えていくための夫婦の理想のタイムスケジュールをご紹介します。かなり理想の高いものと、今から取り入れられる要素の多いものの2パターンを作成しました。両立の達成をイメージする際の参考にしてみてください。

参考
内閣府男女共同参画局「仕事と生活の調和」推進サイト

両立するためのタイムスケジュールのポイントは「持ちつ 持たれつ」

両立するための理想のタイムスケジュールをご紹介します。なお、2パターンとも「男性2人で子育てした場合」を想定して作りました。もし提示したタイムスケジュールを「自分たち夫婦」に置き換えてイメージできないのであれば、そこにジェンダーバイアスが潜んでいるかもしません。ぜひ、そのような視点でも眺めてみてください。

1週間の家事育児を含めた「理想」のタイムスケジュールと分担

理想のタイムスケジュールについて、さらに以下の条件を追加して作成しました。

  • 大人2人は、どちらも在宅ワークが可能で、勤務時間も指定なし
  • 大人2人はどちらも定期的かつ継続的な仕事があるが、産前より受注量は抑えている
  • 大人2人が働く曜日は主に平日。納期によっては、休日に作業することもある

つまり、大人2人はかなり柔軟に作業する時間を調整できるため、お互いの忙しさに応じて、育児・家事を担う量を調整しあえるということです。このような条件を踏まえ、Aさん・Bさんそれぞれの平日のタイムスケジュールを考えました。

誤差はあるものの、AさんとBさんの育児家事・仕事の総量は、平等に近い状態です。それぞれがフリーランスで、「いつどこで働くか」を自分で決められる場合、急な予定が入っても、どちらかが育児・家事・仕事に対応できます。

そのため、1日あたりの仕事時間は少ないものの、仕事を休まなければならない状況を回避でき、キャリアが途切れることもありません。

下の図は、それぞれが1週間のうちに取り組んだ、育児・家事・仕事の1日あたりの平均をあらわしています。

育児と仕事の時間に誤差はあるものの、時間だけを見れば「両立できている」ことがわかります。ただ、このような役割分担を実現できる家庭は、どのくらい存在しているのでしょうか。

そもそも、会社員で副業禁止、テレワーク禁止であれば、前述のタイムスケジュールを叶えるのは難しいと言わざるを得ません。また、仮にフリーランス同士であったとしても、月によっては実現が不可能な場合もあるでしょう。ただ、ベースとして、上記のような割合を2人で目指すことができていれば、1人が「キャリアが築けない」「私ばっかり家事している」と悩む状況は回避できます。

上記の時間割を2人で達成するためのポイント
  • 在宅ワーク(テレワーク)ができる
  • フレックス勤務できる
  • 時差出勤ができる
  • 直行直帰できる
  • 中抜けができる
  • 夜間に業務ができる など

1週間の家事育児を含めた「リアル」なタイムスケジュールと分担

続いて、少しリアルなタイムスケジュールも考えました。追加した条件は以下のとおりです。

  • 大人2人の職業は正社員で、役職は主任~部長代理クラスである
  • 大人2人が勤務する曜日は原則「平日」のみである
  • 2人のうち、Bさんのみ時短勤務が認められている

この条件を踏まえ、Aさん・Bさんそれぞれの平日のタイムスケジュールをご覧ください。

Aさん・Bさんが出社する平日に、上記のように育児・家事、仕事が分担されていれば、偏りはあるものの、総合的にみれば両立を達成できているといえます。

北欧諸国の共働き例を考えると、仕事の偏りが大きいですが、今の日本ではこのようなタイムスケジュールが、正社員共働き家庭でできる、理想の分担ではないでしょうか。

下の図は、それぞれが平日の5日間に育児・家事・仕事にかけた時間について、1日あたりの平均をあらわしています。

どちらか一方しか時短勤務ができない場合、どうしても仕事の時間に不平等が生じます。また、フルタイム勤務をする側も、出勤前や帰宅後の育児・家事で疲れがとれない場合もあるでしょう。

バランスの偏りを解消するためにも、休日の育児・家事の分担割合を調整したり、外注を取り入れたりしてみてください。仮に、両立するための夫婦間の話し合いや分担がうまくいかず、育児や家事が大変な日々が続いている場合は、第三者に相談するのも1つの方法です。

参考
相談窓口 | あなたのミカタ | おやこのミカタ

両立を達成している家庭は、夫婦の目線が対等

個々の家庭によって、理想のタイムスケジュールも、そこに至るまでのアプローチも異なります。とはいえ、自分の理想を実現し、それを保ち続けるためには、どちらか1人に負担をかけるのではなく、「持ちつ持たれつ」でなければ難しいことがわかりました。

そして、双方に「総合的な分担を『50:50』にしよう」という意識がなければ、家庭に合った両立は実現できません。現状、負担が明らかに片方へ偏っていたり、夫だけ・妻だけが慢性的に「しんどい」と感じていたりする状態であれば、それは両立できているとはいえません。

また、共働き家庭が増えたとはいえ、必ずしも「50:50」を目指す必要はありません。外の仕事を担う人と家で働く専業主婦・専業主夫という夫婦や、2人とも長時間働き、家事・育児は第3者にも参加してもらう夫婦、お互いのひとり時間を確保しつつ、家族全員で過ごす生活も楽しむ家庭もあります。家事・育児・仕事ともに、各家庭ごとに心地よい割合も人それぞれです。周囲の声は気にせず、夫婦2人が対等に目線を合わせ、ちょうどいい両立のバランスを探してみてください。

まずは「時間の余白」を生むために、現状を見直しましょう。そして、不満や疲労感を許容範囲内におさめていきましょう。はじめの一歩として、以下をぜひ取り入れてみてください。

両立のためのはじめの一歩
  • お互いに感じていることをまずは話し合ってみよう
  • お互いが実際にしている家事や育児、仕事の状況を見える化してみよう
  • 自分だけで頑張りすぎないようにしよう
  • 夫婦で、個人で、リフレッシュできる時間と空間をつくろう

夫婦それぞれに「時間の余白」が生まれれば、不満が和らぐこともあります。また、相手の現状を理解し、配慮する余裕もお互いに生まれるはずです。また、休息により疲れがとれ、意欲的に活動できるようになるかもしれません。

大切なのは、そのような改善策を夫婦間で話し合い、落としどころを探し、そのときのベストな役割分担、働き方を考え、外部サービスや便利な家電などを取り入れながら、育児家事も仕事も楽しむのを諦めないことではないでしょうか。

今すぐ使える、検討できる「外部サービス」や行政支援策のご紹介

とはいえ、子どもに手がかかる間はどうしても、成長にともなうケアや見守り、通院なども必要で、さまざまなスケジュールや量的なバランスの変動があります。また、思いどおりにいかない不満や疲労感が蓄積されていきます。

最後に、時間の余白を生み、夫婦での育児家事・仕事の両立を助けるサービスや行政の支援策などをご紹介します。疲れ切って動けなくなる前に、外部の力も柔軟に取り入れてみてください。

親族以外の、安心できる預け先の確保・用意

以下は、どれも事前に登録しておくことで利用できる、子育て支援サービスです。金額を安く抑えられるものも多く、子育てに関する悩みごとを専門家に相談する機会としてもおすすめです。

子どもの習い事の送迎を叶えるサービス

共働きをしていると、平日の習いごとの送迎が難しく断念せざるを得なかったり、一方が送迎を担うことになり、それが負担となったりすることがあります。

その解決策として、「他人に送迎を任せてしまう」あるいは「家で習えるものを見つける」という方法があります。また、1人で通えるようになるまでは休日に単発で参加できるイベントやアクティビティを探すのもおすすめです。

(1) 子ども1人乗車をサポートしてくれる「子育てタクシー」
参考:陣痛時から検診、子供の通園、通塾の送迎タクシーなら日の丸交通!|日の丸交通株式会社

(2) ベビーシッター、家事代行サービス
参考:工作もできるベビーシッターで習い事も兼ねた子供の保育を!|キッズライン

(3) オンライン開催や出張レッスンの活用
参考:オンピーノ子供ピアノ教室/出張レッスン
   オンライン家庭教師の「まなぶてらす」|とびきりの先生をいつものリビングに。

子育てしやすい住まいの確保

少子高齢化による顧客獲得に向けて、子育て世帯に対し、住宅費の高騰やインフレによる家計の圧迫を支援する取り組みや割引が増えています。

  • 「UR賃貸住宅」の子育て割
  • 自治体別、新婚世帯・子育て世帯向けの住宅費補助
  • 自治体別、移住促進のための分譲住宅の購入費用負担
  • 子育て世帯向けに開発された、コンパクトシティ
参考
「時短」で子育てをサポート コンパクトシティがかなえる育児環境とは【育住近接(3)】 | スーモジャーナル

家事の時短に!便利な家電の活用

最新の家電を導入すれば、家事にかかる時間の大幅な短縮も可能です。「高いので利用を見送っている」という場合、お試しできるレンタルサービスをいろいろとあるので、そのようなサービスも使いながら検討してみてはいかがでしょうか。特に家事が苦手な方にとっては、肩の荷をおろし、休息時間を増やすための投資になるでしょう。

おすすめの時短家電
  • ドラム式洗濯機
  • ロボット掃除機
  • スマート調理家電
  • 除湿器
  • 加湿器 など
参考
Rentio[レンティオ] – 家電をレンタルでお試し サブスク型の月額制利用も どんな製品も買わずに試せる!
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AUTHOR

もえこのアバター もえこ 在宅ワーキングマザー

兵庫県在住。妊娠中から在宅ワークを開始し、現在フルタイムで稼働中。趣味は推し活と読書。

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