シングルマザーの実情
2020年の日本国内の母子家庭世帯は64万6809万世帯。母子世帯内の子どもの最年少年齢の数値を見ると、12〜17歳が最も多い割合ですが、小学校入学前の世帯は102,800世帯にも及びます。数字で羅列してみてもなかなか実情が見えてこないので、世帯種別に推移をグラフ化してみました。
1986年から2021年まで、特に変化があったのは「単独世帯」と「夫婦のみ世帯」数の増加です。かつて一番オーソドックスな世帯の形であった「夫婦+未婚の子ども世帯」が減り続け、2019年には「単独世帯」に抜かれてしまいました。一方、「ひとり親世帯」は少し上昇しながら、「母子世帯」「父子世帯」は比較的横這いに推移しています。子どもを産まないと選択する人が増えているにもかかわらず、「ひとり親世帯」は増えているということは、子どものいる世帯の中での「ひとり親世帯」の割合が増えつつあるのではないでしょうか。
子どもはいつの世代でも手がかかるものではあるけれど、手間のかかる保育園の子どもの世話を、仕事をしながらひとりで背負うのは容易なことではありません。そして小学校入学しても、「時短勤務が使えない」「延長保育がない」という「小1の壁」が待ち受けています。その上、母子世帯のうち37.6%が年間所得額200万円未満であり、母子世帯の45.1%が生活を「大変苦しい」と回答しています。調査結果からもわかるように、仕事、環境、お金の問題はシングルマザーから切り離せない問題となっています。
参照
総務省統計局
人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐国民生生活基礎調査
国民生活基礎調査の概況
シングルマザーの地方移住が増えている理由
ひとり親世帯の地方移住の取り組みが、日本全国の自治体で積極的に行われています。人口が減りつつある地方自治体にとっての地方創生の一環となっているからです。一世帯が移住することによって、子どもの人口も増え少子化対策につながり、その上、親が働き盛りの世代ならば労働力にもつながります。リモートワークなどの働き方の多様化も、ひとり親世帯にも地方自治体にとっても地方移住活動のかなりの後押しとなるのではないでしょうか。コロナの影響もあり「東京一極集中」が弱まってきた今、子育て支援も豊富で、家賃負担も少ない地方へ目を向けるシングルマザーが増えるのは当然のことかもしれません。
地方移住のメリット
生活費が抑えられる
「お金」の問題を解決するためには、出費の大部分を占める「家賃」を減らすことが最初にあがる課題でしょう。東京都の1LDKの平均家賃は約14万円となっていますが、お隣の千葉県になると約7万円と1/2の賃料となります。もっと遠く、東北地方、四国地方では4万円代と賃料を下げることができます。それ以外にも、物価も東京より割安なので、食費、生活費を抑えることが可能でしょう。
子育てに関するサポートが手厚い
自治体は移住だけではなく、ひとり親に向けての子育てサポートにも力を入れています。例えば、ひとり親世帯の児童扶養手当や母子父子寡婦福祉資金貸付金、引っ越し費用の負担や、ひとり親家庭等学習支援事業として無料の学習支援サービスなど独自のユニークな政策に取り組む自治体もあります。
自然が多くのびのびと育児をしながら過ごせる
都会とは違い、身近に自然を感じることのできる環境での子育ては、親にも子どもにも新しい刺激を与えてくれるのではないでしょうか。また通勤時間も短縮されるので、子どもと過ごす時間も自然と増えてくるという利点もあります。
地方移住のデメリット
都会での便利な生活に慣れていると、地方での生活は不便に感じることも多々あるでしょう。徒歩圏内にコンビニがない、車がないと生活ができない、子どもの塾や習い事などが少ない……探してみれば不安な点は数々出てくるものです。そもそも地縁のない土地で生活するためには、後から後悔しないためにも、きちんとデメリットも確認して納得してから準備に取り掛かることが大切です。
- 交通が不便で車が必須なところが多い
- 都会に比べ塾や習い事の数が少ない
- 母親の仕事が限られる
- 出かける場所が少ない
- 地方では匿名性が守られる環境が小さい
- 移住先によっては地域に馴染めず孤立する
- 近所付き合いが煩わしく思うこともある
- 病院が少ない
おすすめの移住先のご紹介
静岡県伊豆市
穏やかな気候で、南側は天城山、西側には駿河湾と自然豊かな伊豆。「伊豆市ひとり親プロジェクト」として、ひとり親が望む就労、居住、子育てしやすい環境を提供し、積極的に本市への移住・定住促進を図る施策の実現に向けた取り組みを行っています。「ひとり親地方移住ネットワーク会議」に加盟して、移住支援事業における情報交換や調査研究、合同移住相談会の実施等を、全国の自治体と積極的に連携しています。
支援例
- ひとり親世帯引越し等支援事業補助金
- ひとり親移住定住促進補助金(賃貸補助・住宅補助)
大分県国東市
瀬戸内海に面した国東市は、国立公園、自然公園、国指定の名勝に指定されるなど風光明媚な自然豊かなまちです。「移住シングルペアレント生活応援補助金」として、
- 引っ越し費用最大30万円の補助
- 家賃補助最大2万円×最長36ヶ月
- レンタカー補助上限5万円×3ヶ月
の応援補助があります。また、「子どもの居場所づくり事業」として、共働きやひとり親家庭のために、夕方から夜にかけて一人で過ごさなければならない小学生を対象に夕食の提供や学習支援を行い、安心して過ごすことができる居場所を提供する事業など、働きながら子育てをするひとり親にとって心強いサポートもあります。
兵庫県神河町
神河町は、兵庫県のほぼ中央に位置しているので交通の便がよく、自然と歴史に彩られた非常に住みやすい町です。移住者も年々増えて、平成28年度から令和3年度までで22世帯64人が移住しました。移住コーディネーターと定住支援員が設置され、移住・定住に関する相談にのってもらうこともできます。
支援例
- 自身も移住者である移住プランナーの相談受付
- しごと、住まいの相談、紹介
- 連携市町との移住相談会の実施(ひとり親地方移住支援ネットワーク会議)
- ひとり親移住者のコミュニティー支援(交流会の開催など)
石川県穴水町
石川県能登半島の中央に位置する穴水町は、内湾の静かな海、四季を感じることのできる食材など自然の魅力満載です。「シングル限定おためし就職支援事業」として、町内で一定期間住みながら、実際に求人募集している町内事業所でのインターン就職を体験することで、穴水町での暮らしを実際に感じることができます。
支援例
- 居住地から本町までの公共交通機関利用運賃及び高速道路通行料など、往復交通費を支給(上限10万円)
- おためし就職期間中(2日目から)の報酬を支給(1日6時間の就業で1日当たり5,000円)
- 宿泊施設から体験事業所までの公共交通機関にかかる交通費を支給(上限1日1,000円)
- おためし就職中、認定こども園などに子どもを預けた費用を支給(上限1日4,000円)
岩手県盛岡市
岩手県の県庁所在地である盛岡市は、交通の便はもちろん、歴史的な建物や中心部を流れる中津川など見所もたくさんの住みやすい町です。そして、県を挙げて「岩手県ひとり親家庭等自立促進計画」を進めている、ひとり親世帯に優しい地域となっています。
支援例
- 母子家庭等高等職業訓練促進給付金(資格習得支援。通常は月額10万円を最大48ヶ月)
- 母子家庭等自立支援教育訓練給付金(指定教育講座の受講を支援。費用の60%を支給)
- 母子・父子自立支援プログラム策定事業(無料で専門家に相談しながら、自立までのプランを策定できる)
- ひとり親家庭等医療費の給付(18歳未満の子どもがいるひとり親家庭が対象。所得に応じて医療費を一部補助)
参考サイト
『一般社団法人 日本シングルマザー支援協会』
シングルマザーのための地方移住定住
『一般社団法人 日本子育て制度機構イクハク運営事務局』
都道府県制度一覧
『株式会社英和出版社 複住スタイル』
【2023年版】ひとり親(母子・父子家庭)の移住に優しい自治体10選
『株式会社くらしのテクノロジーズ ひとり親wacca』
【2022年版】シングルマザーの地方移住
『株式会社ハイナス・アンリミテッド WEELS』
【まとめ】母子・ひとり親家庭の地方移住支援を行っている地域を紹介
『株式会社KG情報 ママ賃貸コラム』
【必見】母子家庭(シングルマザー)への支援が手厚い自治体はどこ?
『株式会社ReRe 』
【シングルマザー必見】地方移住に向く人・向かない人の特徴7選