時代の流れとともに変わりゆく流行。その潮流をつくっていくのは常に若者です。近年、Z世代の中で「タイパ」というワードが日常会話の中で用いられています。「コスパ」というワードは誰もが一度は耳にしたことがあると思いますが、「タイパ」はまだ世の中的にはそれほど浸透している言葉ではありません。今回は、そんな「タイパ」について色々掘り下げて、解説して行きたいと思います。
若者を代表するZ世代とは?
「Z世代」一度は耳にしたことあるワードだと思います。Z世代というのはアメリカで1997年から2012年の間に生まれた世代を指す言葉です。それに対し、日本では幅が広く、1996年から2015年の間に生まれた世代を指す際に用いられます。この定義によると2021年時点で年齢は6〜25歳の世代をZ世代と呼びます。また、少し前の1981年代後半から1995年の間に生まれた世代のことを「ミレニアル世代」・「ポストミレニアル世代」と呼んだりします。
Z世代と言っても、言葉も話せない子供から社会人として活躍する大人までいるので、その層はとても幅広いです。そのため、具体的に人物像が想像しにくいでしょう。マーケティングのターゲットとしてZ世代を対象にする際は、現時点で10代後半から20代前半の人物を想定します。また、世界全体では人口の25%、日本全体では30%を占めます。
デジタルネイティブ
Z世代は生まれた時から、インターネットが当たり前に存在する時代に生まれ育った世代であるため、デジタルネイティブとも呼ばれます。物心がついた頃から、親や周りの大人などがインターネットを利用している姿を見ているうえ、学校教育などを通してインターネットに触れる機会がとても多いため、インターネットを利用することに対して、苦手意識や抵抗感がある人はほとんどいません。むしろ、利用していない人はほとんどいないと言えます。また、最初に手にする電子機器がスマートフォンだったという人も多いため、SNSは日常生活の一部として過ごしている人が多いのが特徴です。
グローバリゼーション
Z世代はInstagramやTwitterをはじめとするSNSをほとんどの人が利用しています。ネットワーク社会になったことで、オンラインで世界中の誰とでもつながれるようになりました。
例えば、今までは海外留学をしようと思った時は、留学経験のある人や学校、知り合いに話しを聞くなどしか手段がありませんでした。ですが、今だと現地にいる人や外国人などに簡単に連絡を取ることが出来ます。また、最近だと大学生がSNSを利用し、現地にいる外国人と日本にいる海外留学したい学生を繋げるサービスなどもあります。
Z世代の価値観を代表する「タイパ」
スマホやSNSの普及により、Z世代のお金の消費方法や価値観も徐々に変化しています。以前はTVや雑誌などのマスメディアが中心でした。しかし、現在はInstagramやTwitter、TikTokなどのSNSが今は中心になっています。自分なりに情報を分析し、自分に合うものを探しています。そのなかでも特にZ世代の特徴ともいえる例をいくつかあげてみます。
アニメや映画は倍速視聴が基本
Z世代では映画やアニメなどを倍速で視聴する人が増えています。例えば、2時間ある作品を1時間で観ることを「タイパがいい」といいます。タイパは「タイムパフォーマンス」の略語です。要するに、無駄な時間を減らし、なるべく効率よく作品を吸収するということです。NetflixやYouTubeなどでは標準で倍速再生機能が付いているので、それらを活用している人が多いです。筆者の友人にも「映画などはネタバレと解説を一度見てから視聴する」人がいます。理由を聞くと「もし、面白くなかったら見てた時間が勿体ない」つまり、なるべく時間を無駄にしたくない。時間をかけて面白くない映画をみるよりも、自分が興味あることに時間を有効活用したいということです。
映画館は時間かかる
映画館では、会場に向かう時間、チケットの購入、上映前のCMといった時間がかかる。これらをZ世代では「タイパが悪い」といいます。また、「後々、オンデマンド配信される作品をわざわざお金を払って観るのはお金がもったいない」と考えるひとも多いでしょう。映画館にわざわざ見に行かなくても、Netflixや、Hulu、Amazon Primeなどで配信されるのを視聴するので全く問題ないからです。
YouTubeやTikTokのコンテンツも切り抜き動画で十分
最近、YouTubeやTikTokで切り抜き動画というものが流行っている。切り抜き動画とは有名YouTuberが配信した動画の面白い所や印象深い所を切り抜き、それを3分のような短尺動画に編集しなおして、YouTubeやTikTokで公開するというものです。一見すると、それがなぜ流行るのか分からないが「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」開設者のひろゆきこと西村博之氏のTwitterによるとYouTube配信を切り抜いた動画の再生回数が3億回を超え、さらに2021年5月中に1回でも西村博之氏の切り抜き動画を視聴した人数が1583万人いると発表しました。
TikTok を発端として、Facebook、Twitter、Instagram、LINEといった代表的なSNSでは「ストーリーズ」「ストーリー」「フリート」といったショート動画の共有機能、YouTubeでは「ショート動画」の投稿機能が実装されました。これらは、ユーザーの「タイパがいい」消費行動を加速させているといえます。
外食はネット上での高評価の数で決める
Z世代はSNSの「口コミ」や「レビュー」にとても影響を受けやすい世代です。お店に行く前に情報収集を入念に行う傾向があります。口コミの評価=良いお店と考えるひとも少なくありません。筆者の友人も外食する際には、「ここのお店はGoogleの口コミ評価が高いから行ってみよう」や「そこのお店は低評価が多いからやめとこう」という人がいます。わざわざお金と時間をかけて外食をするのに「失敗したくない」という傾向がとても強いように感じられます。そのため、お店などの情報をGoogleマイビジネスの口コミを調べたり、TwitterやInstagramといったSNSでもお店に関する発言を検索したりします。
音楽業界にも「タイパ」の波?楽曲時間が短くなっている傾向
音楽業界にも新しい波が来ています。スマートフォンの普及と共に音楽の消費はストリーミング配信が主流となり、SpotifyやApple Musicなどの音楽ストリーミングサービスがにぎわっています。それにともない。楽曲の長さも年々短くなっています。
1995年に流行った楽曲のほとんどは大体4分30秒〜5分前後の長さでしたが、2021年最新の流行曲は大体3分30秒ほどで、さらに短い曲だと2分前後になります。楽曲の制作手法も変化しており、できるだけ「歌」を聴かせるために、イントロや間奏を極端に短くしている楽曲が多く見受けられます。
また、楽曲の発表場所としての主戦場がCDから「YouTube」や「TikTok」といったSNSに変化したことも大きく関係しています。ショート動画はスワイプで次々と動画を再生できることから、1動画あたりの平均視聴時間がぐっと短縮されます。1分未満の動画も少なくありません。そのため、いかに短いフレーズや曲調でユーザーの印象に残すか?といった点が、今までの楽曲づくりとは根本的に考えかたが異なる点といえるでしょう。今年大流行したAdoの「うっせぇわ」もまさにその潮流にあり、オリジナルコンテンツだけではなく、他ユーザーによる「切り抜きコンテンツ(歌ってみた動画や踊ってみた動画など)」の拡散によって加速するコンテンツ消費もZ世代独特の感性といえるでしょう。
Z世代のありかたとは?
Z世代はリアルとオンラインを区別せずに暮らしています。SNS上の人とリアルの人は対等の位置にあるという考え方です。例えば、InstagramやTwitterのフォロワーがその人のステータスになっています。他の人より、優位な立場になりたい。有名になりたい。それが数値化され、評価される世代がZ世代です。そのため、質より量。人よりも、色々な情報を持っていることをアピールしたいという傾向があります。友人より情報を持っていなければ自分の方が下。共感出来ないと恥ずかしい。その焦りがZ世代が「タイパ」を重要視する理由のひとつだと筆者は考えます。
これだけを聞くとマイナスな印象が残りますが、反転してマイノリティが声を上げやすい世の中になったともいえます。以前なら、マスメディアが情報の中心にあり発信されたものをただ受動的に受け取って個人で消化することしかできませんでした。誰もが自分の意見や情報を発信することができ、みなに平等に発言権が与えれられています。そのように世の中が変化したことはとても良いことだといえるでしょう。
また、近年フィルターバブルというワードも話題になっています。フィルターバブルとは「自分の見たい情報しか見えなくなること」という意味の言葉です。フィルターバブルにより、自分にとって都合の悪い情報や自分とは異なる価値観・考え方に触れる機会がなくなることが問題になっています。
WEBサイトやSNSでの過去の検索履歴や閲覧履歴からユーザーが見たいと思われる情報を自動的に判断し表示する仕組みをパーソナライズと言います。インターネットの発達により情報過多といわれるこの社会において、それはユーザーにとって便利でもあります。なので、自分が受け取っている情報が「パーソナライズされた情報」であり、自分自身が視野狭窄に陥る可能性を理解したうえで、情報と向き合うことが現代に置いて必要なことだといえるでしょう。