専業主婦が妻という「足枷」を外して「私」を再び手に入れるためのサバイバル戦略

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共働き家庭が増加している昨今。「もう一度働きたい」という気持ちがあるものの、なかなか一歩を踏み出せない方もいるのではないでしょうか。

働きたいけれど、働けない。新しいことを始める気持ちにもなれない。

そのような現状の原因として、いろいろな「足枷」があると感じています。この足枷を「本心を縛りつけて、自身が望んでいない行動や思考にとどまらせているもの」と定義づけ、本記事では「妻」「専業主婦」「ワーキングマザー」と呼ばれる人たちに、どのような足枷があるのかを明らかにしていきます。

一歩を踏み出すための方法や具体例、さらにもう一歩進んで、自立するためのアイデアも紹介しているので、少しでも参考になれば幸いです。

TOPIC

なぜ、「専業主婦」を脱却したい方が増えているのか?

専業主婦という言葉は、有賃金の労働をしておらず、家庭内の役割を担っている女性を指します。明言はされてはいないものの、そこには「夫が大黒柱で、その分、妻は家を守る」という役割意識を感じてしまいます。

戦後日本を支えるために植えつけられた「母親は家庭に」という思想

そもそも「専業主婦」という呼び名が足枷なのかもしれません。国内では、戦後に農林漁業中心だった社会が、製造業中心の高度経済成長期に突入して以降、男性の就業者らに金銭的な余裕がうまれたことや、当時の内閣が「母親は家庭に入れ」というメッセージを繰り返したこともあり、女性の専業主婦化が進んだと考えられています。

その後、共働き家庭の増加に伴い、「兼業主婦」という言葉も登場し、「外で働いていたとしても、家庭の仕事を担うのは女性である」「専業主婦は働いていない」というバイアスを感じる方が増えていきました。

専業主婦になりたい若者と、将来に不安を抱える専業主婦たち

昨今は「専業主婦」のイメージに息苦しさを感じる方も少なくありません。ソニー生命が2020年に行った調査によれば、「専業主婦志向」の方は減少傾向で、回答した専業主婦の半数以上が「子育て後の再就職は厳しい」「老後の生活が心配だ」、約3割の方が「本当は外に働きに行きたい」を答えています。一方で20代の若者の4割は「専業主婦になりたい」と回答しています。(参考:女性の活躍に関する意識調査2020 | ソニー生命保険

この背景には、住居費や物価の上昇による生活費の圧迫があります。共働き家庭の増加と少子化対策として、配偶者控除なども見直されました。

しかしながら、専業主婦として生きてきた方が、社会に出ることになったとき、満足のいく収入を得て、これまでどおり生活するのは簡単なことではありません。1人の人間として生き抜いていくためには、やはり何かアクションを起こせる状態をキープできているほうが安心です。

肉体的・精神的な自立なしに「私」の本心は見つけられない

1人で生き抜ける人間になる。つまり、専業主婦からの脱却には何が必要なのでしょうか。前述した「満足のいく収入を得て、これまでどおり生活する」という方法は、あくまでも脱却の一例に過ぎません。

本当に大切なことは、肉体的・精神的な自立です。肉体的な自立とは「自分の意志で行動できる」こと、そして精神的な自立は「自分の感情をありのまま受けいれられる」という状態といえます。この二面での自立を叶えてこそ、専業主婦からの脱却につながるのではないでしょうか。

近年は、ひきこもり状態になっている専業主婦の方も数多くいます。望んで専業主婦になった方、夫の都合でならざるをえない方など、実情はさまざまだと思いますが、これからを健やかに生きていくためには、自立を阻害している「足枷」に気づくことが大切です。

専業主婦の自立を阻む「足枷」とは?

冒頭でご説明したように、足枷は本心を縛りつけて、自身が望んでいない行動や思考にとどまらせているもの、つまり阻害要因で、専業主婦の方が新しいことを始める際の障壁となっています。

この足枷は人によってさまざまで、大きくは自分の内面が影響しているもの、そして自分以外の固定観念によるものに分けられます。

足枷1. 「こわい・不安だ」という気持ち【内的要因】

内的要因としては、変化やこれまでの日常が変わることへの恐れが挙げられます。そういった感情は悪いものではなく、動き出していく中で解消されたり、和らいだりしていくことも多くあります。

足枷の内的要因

【動き始める前の不安や恐れ】
・生活リズムを変えられるか
・周囲の理解が得られるか

【動き始めたあとの不安や恐れ】
・失敗した場合にへこむ
・うまくいかず、早々にやめてしまう

上記のうち「周囲の理解が得られるか」という不安は、後述の外的要因によって引き起こされている可能性があります。これについては、自分だけでは解消しきれない面もあるため、「自分はどう思うのか」にフォーカスすることで、固定観念をくずしていく必要があります。

足枷2. 周囲の無理解・自分以外の価値観による縛り【外的要因】

したいことができない、やりたいようにやれない。そのような状況にあなたが陥っている場合、外的要因として挙げられるのは、自分以外の人からの「妻」「母」「嫁」という役割の要求です。これもなかなか解消しづらい問題ですが、誰によって阻まれているのかがわかれば、その後の対応を考えられます。

足枷の外的要因

・友人・知人・近隣の人からの「まだ働くの?」
・両親・親族からの「体裁が悪い」「甲斐性なし」
・夫からの「生活がずれる」「俺より稼ぐな」「家事は手を抜くな」

自立に向かうための4つの成長フェーズ

紹介したような足枷をはずして、専業主婦が「私」を取り戻していくためには、いくつかの段階をふむことが必要です。ここでは、それを成長フェーズとして、順番にご説明します。

自立に向けた、4つの成長フェーズ

Phase1 まずは「足枷」が何かに気づく

Phase2 おのれをふるい立たせる

Phase3 実際にどう動けばよいのか、戦略をねる

Phase4 余裕がでてきたら、次のステップへ進む

Phase1:まずは「足枷」が何かに気づく

自分の足枷はいったい何なのか。まずはそこに気づくことが不可欠です。自立を阻んでいる要因を考えることで、「ほんとうはどうしたい?」に気づくきっかけにもなります。

いま感じていることを、内的要因・外的要因に分けて紙に書き出したり、第三者へ話したりすることで、本当は自分がどうしたいのか、それを何が阻んでいるのかを明らかにすることができます。例えば、自治体などで開催されているキャリアカウンセリングや、1時間数千円で受けられるオンラインカウンセリングなどを活用するのもおすすめです。

また、新しい生活や仕事に慣れるまでの間に不安や恐れを強く感じる場合もあります。そのような時は、自分なりのリフレッシュ方法をいくつか持っておき、「引きずらない」を意識するとよいでしょう。

「足枷」への気づき

子どものそばにいなければいけないと思っていた。でも、子どもも中学生になったし、空いた時間を自分のために使えるんじゃないかな

本当は働きたいのに、義母から『嫁が働いていたら近所にどう思われるか』と言われて以降、そういうものだと思ってきた。残りの人生を考えると、まだ周囲の人を気にする必要ってある?

Phase2:おのれをふるい立たせる

「いま働かなくても問題なく生活できている」という場合、現状を変えるのが億劫に感じられるかもしれません。そのような場合もきっかけがあれば、自分自身をふるい立たせることができます。ここでは、2つのパターンをご紹介します。

1つは、負の感情を抱くことです。将来への不安、現在の不足感というマイナスの感情に目を向けることで、否が応でも「なにかしないと」と思えるでしょう。

もう1つは自分の理想の姿、つまりプラスのイメージを考えることです。例えば、「好きなことを追究している自分」を思い浮かべてみてください。「好き」の対象は、昔の特技・趣味のほか、芸能人やアニメ・漫画、音楽、特定の分野の知識など、なんでも構いません。

そのようなものを思いっきり楽しむ自分を叶えるには、ある程度の資金が必要となります。

具体的な対象が思い浮かばない方は、SNSなどでロールモデルを探してみるのもおすすめです。「あの人のようになりたい」「あんな生活を送ってみたい」と妄想しているうちに、自分にとっての理想がイメージしやすくなるはずです。

ただし、中にはそのような投稿に憧れる主婦をターゲットにした情報商材やスクールもまぎれています。「初期費用がかかるけれども、後で絶対に儲かる」「1ヶ月で誰でも月数十万円稼げるスキルを身につけられる」といった美味しい話には騙されないよう、ご注意ください。

Phase3:実際にどう動けばよいのか、戦略をねる

モチベ―ションを高めることができたら、今度は実際にどのように動いていくかを考えていきます。ただし、いきなり週5日、9時から5時のシフトで働くのはおすすめしません。まずは週2・3日から雇われてお金を得ることを経験するほうが、精神的にも体力的にも無理なく始められます。

大切なのは、お金を稼ぐ経験です。はじめは少ない額でも、続けることでお金をつくるリズムが生まれ、「自分にもできる」という自信につながっていきます。

また、ある程度お金が溜まれば、それを元手に好きなことを学んだり、新しい場に行ったりすることもできます。もちろん「働いて貯める」ではなく、「貯金して学ぶ」から始めても大丈夫です。

自立するためのスモールステップ

自立をめざすスモールステップ

Step1 パート・アルバイトなどで「雇われる経験」をしてみる

Step2 稼いだお金をコツコツと貯めて「資金」をつくる

Step3 好きなことを学べる場や新しいコミュニティに「参加」してみる

3つのステップのうち、どれか1つだけにチャレンジしてもかまいません。すべて将来の選択肢を増やすための戦略となるものなので、あまり初期費用をかけたくない方は、3つ目のステップから始めてみてください。これまで参加したことのないコミュニティなどに足を踏み入れてみると、これまでの生活時間が少し変わるほか、自分とは違う他人の価値観にも触れることができます。

反対に避けたほうがよいのは、新卒の方や転職希望者と同じような就職活動です。

いきなり「時給が良い」「責任のある仕事を任せてもらえる」という高収入案件を狙ってしまうと、働くことができたとしても、これまでの生活とのギャップについていけなくなったり、自分のスキル不足に落ち込んだりする可能性があります。また、繰り返しになりますが、好条件をぶら下げて主婦を狙う「詐欺」にも注意が必要です。

身近にあるサードプレイスを探してみよう

ここで、専業主婦のスモールステップになり得る「サードプレイス」をご紹介します。下記はあくまで一例です。参考にご覧いただき、お住まいの近くのコミュニティや相談所、オンラインで開催のイベントなどをぜひ探してみてください。

地域のコミュニティスペース
  • 広報誌掲載のセミナーやスタッフ募集
    地域の情報を集めやすいのは、自治体発行の広報誌やWebサイト。
    イベント情報やスタッフ募集に目を通しておくのがおすすめ。
  • 保護者向けサークル
    子どもの学校関連の、親向けサークルも多種多様。
    指定区域にめぼしいものがない場合、近隣の地区の情報を集めてみるのもおすすめ。

こんな方におすすめ

「地縁もないので、今後のためにも地域の方ともっと関わりたい」
「できれば、生活圏外の人とつながりたい。ボランティア活動も気になる」

就職支援
  • マザーズハローワーク
    復職におすすめの仕事を検索できるハローワーク。
    特に復職希望の女性や、未経験歓迎の職場の案内も多数あり。
    参考:厚生労働省|マザーズハローワーク事業

  • 保護者向けサークル
    子どもの学校関連の、親向けサークルも多種多様。
    指定区域にめぼしいものがない場合、近隣の地区の情報を集めてみるのもおすすめ。
    参考:兵庫県神戸市「あすてっぷコワーキング

  • コワーキングスペースの仕事相談窓口
    コミュニティスタッフが在籍していることも多く、相談しておくと仕事につながることも。
    無料のキャリアカウンセリングや、主婦向けイベント・セミナーも定期的に開催されている場合が多い。ただし、利用客層によって雰囲気が変わるため、Webサイトの事前確認は必須。
    参考:リクルートスタッフィング「キャリアコンサルティング」
こんな方におすすめ

「働きたいけれど、いきなり長時間勤務は不安。近場でなにかできないだろうか」

リカレント
  • 近隣文化施設や大学の公開講座
    文化センターや博物館、大学などでは単発あるいは定期で、講座を受講可能です。興味のあるジャンルの学び直しにもおすすめ。
    参考:武蔵野美術大学公開講座
  • オンラインスクール
    自宅で無料受講できるものも多い。
    グループ参加なら、他の受講生からの刺激ももらえるため、おすすめ。
    参考:Schooストアカ

  • オンラインコミュニティ
    毎日あるいは毎週定刻に始まるものも多く、学ぶリズムをつけられる。登録者同士でコミュニケーションがとれるものもある。メリットは、少額で始められること。
こんな方におすすめ

「趣味を再開したい、趣味友もほしい」
「得意なことが活かせる場があれば、行ってみようかな」

キャリアデザイン・スキルアップ
こんな方におすすめ

再就職したい。もう一度バリバリ働きたいが、ブランクがあるので自信がない

Phase4:余裕がでてきたら、次のステップへ進む

稼ぎを得る生活リズムに慣れて余裕もでてきたら、次のステップを検討してみましょう。

おすすめは、違う仕事を試してみることです。これまでの仕事はそのままに、収入の柱を増やすイメージで、少しずつ働き口を増やしていけば、できる仕事の幅を拡げることができます。また、その中で自分の好き・嫌いや得意・不得意を再認識できるでしょう。

「合わない」なら、やめてもいい。2つ以上の場を試してみる

それまでの仕事をやめずに、複数箇所で試すという方法は、リスク回避策としても有効です。もし新しい場が「自分には合わない」と感じたら、先ほどご紹介したスモールステップに戻ってみてください。人間関係の苦しさなどが、それで解消されるかもしれません。

また、仕事量を増やした結果、あらためて「家族との時間を優先したい」「休息時間をもっと確保したい」と思う可能性もありますが、それも気づきのひとつです。

いまは「人生100年時代」なので、40代・50代でもまだ折り返し地点。模索する時間はまだまだあります。子どもの成長と同じように、大人にも波はあるととらえて、戦略を練り直せば大丈夫。少しずつ自分にできることを増やしながら、楽しみの幅を広げたり、経験を蓄積していったりすることが大切だと思います。

まとめ

専業主婦として、いまモヤモヤを抱えているのであれば、まずは自らの「足枷」に気づいて、自分が本当はどうしたいのか?を考えてみてください。気づきを得たあとは、自立を目指して、戦略的に動いていくことが大切です。

例えば、家庭以外の居心地のよさそうな空間を探してみる。あるいは、週2・3日ほど雇われる経験をしてみて、自らの力でお金を得る。そして、新しい生活のリズムがつかめたら、今度は次のステップをどうしていくのか、あらためて考えてみるとよいでしょう。
大切なのは、好条件にいきなり飛びつかず、複数の場を試してみて、その中で自分に合うところを探してみることです。無理のない範囲で、本当にやりたいことを模索してみてください。

参照元

e-Stat|国勢調査 時系列データ
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003410397

統計局統計庁、令和4年5月27日「令和2年国勢調査 就業状態等基本集計結果」https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/column/clm_02.html

男女共同参画局、令和元年6月「男女共同参画白書 令和元年版」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r01/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html

男女共同参画局、令和2年7月「男女共同参画白書 令和2年版」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-00-11.html

総務省「労働力調査」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/report/2022/index.html

総務省、平成28年12月22日閣議決定「平成 29 年度税制改正の大綱」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000455835.pdf

内閣府、令和5年3月「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/r04/pdf-index.html

ソニー生命「女性の活躍に関する意識調査2020」
https://www.sonylife.co.jp/company/news/2020/files/201027_newsletter.pdf

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もえこのアバター もえこ 在宅ワーキングマザー

兵庫県在住。小学生2人を育てながら、現在ほぼフルタイムで在宅ワーク中。趣味は推し活と読書。

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