シングルファーザーに関する調査結果~不安解消のカギは「相談先」と「行政・職場の理解」~

NoFrameでは、一般社団法人ひとり親支援協会(代表:今井智洋)の協力のもと、シングルファーザーの現状についての調査を実施しました。

TOPIC

調査結果の概要

本調査では、回答者の属性のほか、大きく分けて「仕事」「教育」「生活」「いまの気持ち」「ひとり親支援」「その他」の6項目に関する回答を依頼しました。

調査の結果、シングルファーザーは社会的なマイノリティであることから、同じ境遇の人と出会える機会が非常に少なく、周囲に相談できる人がいないため、自身や子どものメンタルケア、グリーフケアを求める声も多く挙がっていました。

また、シングルファーザーの場合は、シングルマザーに比べると下記のような状況に置かれているという回答が複数ありました。

  • 支援制度や支援サービスを見つけること自体が難しい
  • 利用したいサービスを見つけても、制限があって受けられない
  • そもそも支援を利用しづらい状況だった

また、今後利用したい具体的な支援として、子どもの将来を支える、学費支援や医療費補助を望む回答も多くありました。

一方で、シングルマザーと同様に、ひとり親としての不安、子育てと仕事の両立にともなう時間不足を彼らは感じています。孤独を感じやすく、精神的な不安を抱えやすい育児中には、各家庭にあわせた情報提供、サポートが必要ではないでしょうか。

調査結果

【仕事】職場の理解なしには、「子どもとの時間」「家庭とのバランス」を取るのは難しい

シングルファーザーになった後、「転職した」または「開業した」という回答がありました。反対に「転職しなかった」という方については、そのままの職場で勤務場所や勤務時間を変えたり、ポストを変えたりしながら働き続けているようです。

ただ、職場の無理解から、従来のままの出張や休日出勤を避けられなかったり、子どもに合わせた調整ができたとしても、心ない言葉をかけられたりという経験をしたという回答も。中には、そのような不都合が起こることが明らかなため、ひとり親として家庭を支えていることを伝えていないという方もいました。

家庭と仕事の両立には、親自身の体調やメンタルの安定も欠かせません。稼働量の融通だけではなく、シングルファーザーのワークライフバランスへの配慮が企業側にも必要ではないでしょうか。

シングルファーザーとなったことが「仕事に影響にあった」という回答が最多

シングルファーザーになったことが、「影響や変化があった」と答えた人が82.2%と非常に多く、反対に「影響や変化がなかった」と答えた人は約18%にとどまりました。

また、アンケート回答者のうち、転職経験を「0回」と答えた方が72.5%、次いで転職経験が「1回」あると答えた方が17.6%、複数回の転職経験者は9.6%となっています。

シングルファーザーになった後、夜勤などをしていた方は子どもと一緒に過ごしやすい9時から17時までの勤務時間に変えたり、なにかあった時に休みを取りやすいポジションに異動したという回答もありました。

ただ、中には仕事の変化にとどまらず、意図的に重要なポストを外されてしまったり、昇進を諦めざるを得ないという状況に陥ったという回答もあり、一概に理解のある職場ばかりではないという背景が見えました。

「毎月の勤務時間」「毎月の収入」に対して、「減少した」が最多

毎月の総勤務時間数に変化があったと答えた人は72.5%で、そのうちの54%が「大幅に減少した」と回答しました。反対に、総勤務時間数が「増加した」という回答は6%でした。

毎月の収入に関しては、「ほとんど変わらない」という回答が33.9%、「少し減少した」、「大幅に減少した」という回答があわせて33.3%、「少し増加した」、「大幅に増加した」という回答はあわせて12.6%という結果になりました。

残業や出張、総勤務時間を減らしたことに比例して、収入が減少したという声や、子どものために休みを取ることが増え、収入に影響したという声が挙がっています。また、家庭との両立によって仕事内容が変化した結果、評価される業務に携われなくなったという人も。

柔軟な対応を行っている会社がある一方で、仕事を取れば、家庭との両立が難しく、子どもに関わる時間を増やせば仕事でのキャリアアップが困難になるという問題があるようです。

「職場の理解」に対して、「ある」が最多

現在の職場について、シングルファーザーに対して「理解がある」という回答は77%となりました。

「理解がある」という回答は、すでに在宅勤務の体制が整備されている会社で働いていた方、子どもの学校行事に合わせた時間の調整や、急な欠勤や早退が容認されている方から寄せられていました。

一方で、「理解がない」と答えた方の職場からは、シングルファーザーに対する知識や配慮が感じられませんでした。例えば、シングルファーザーであることを知っているにも関わらず、出張や残業が発生するなどで、仕事と家庭を両立するには高い壁となっています。

【子どもの教育】をひとりで行うには「選べないこと」が増える

シングルファーザーの悩みとして、「宿題をしっかりと見てあげられない」といった学習面のサポートも、ひとり親ではカバーしきれない部分があると感じているようです。

また、多かったのが子どもの教育に関して相談ができないという回答です。シングルマザーと同じく、ひとり親であるゆえに、日常の中でのささいな不安、例えば子どもに対して教える際に「これで合っているのか?」、叱るときに「この言い方でよかったのか」と、悩むシーンは少なくありません。そのようなときに、話せる、相談できる、吐き出せる相手がいないためです。特に、異性の子どもがいるシングルファーザーの多くは、性教育への難しさも感じています。

「習いごと」に対して、「特になし」が最多

半数以上の家庭が「子どもは習い事・塾に通っていない」と回答しています。その理由として、「送迎が困難」、「宿題をサポートできない」、「準備や手続きを行う余裕がない」、「費用の捻出が難しい」という回答が多く挙げられていました。

共働き家庭でも、平日の夕方に習い事の送迎を行ったり、入会の届け出をしたり、お知らせに目を通す作業をこなすのは困難です。また、宿題も小学校低学年のうちは親が付き添いで見る必要があるもの、丸付けが必要なものも多く、そこまで手が回らないというのが現状だと感じました。

「性に関する教育」に対して、「難しい」が最多

お子さまの性教育に関する質問については、「難しいと感じている」との回答が60%に上りました。

【家事と仕事の両立】は体力・時間が課題となっている

仕事が終わってから、買い出しをしたり、片付けをしたりすることに関して、時間的にも体力的にも大変だという回答が多くありました。シングルマザーや共働き家庭と同様に、ワークライフバランスのために勤務時間を調整できたとしても、その後に毎日の家事を行うのは想像以上の負担だと思います。

家事の中では「料理」に手がかかるという回答が最多

家事と仕事を両立する際に、特に手がかかると感じているのは「料理」で、次いで「掃除」、「洗濯」、「日用品の買い出し」の回答が多くありました。

「今後、家事代行サービスやシッターサービスを利用したいかどうか」に対して、「いいえ」が最多

「過去にシッターサービス、家事代行サービスを利用したことがあるかどうか」という質問について、「はい」が9%、「いいえ」が91%となりました。

今後生活関連サービスに求めることとして多数を占めていたのは、「父子家庭向け」の情報がほしいという回答です。「支援サービスを見つけても、費用が高く継続利用がむずかしい」、「相談するにも仕事をしながらタイミングを見つけるのが難しい」といった悩みがあるようです。

【シングルファーザーが抱いている不安】は子どもの将来、ひとり親としての孤独に由来する

多くのシングルファーザーが、ひとり親としての不安を感じています。毎日の家事と仕事と育児を1人で行いながら、心身ともに限界を感じている中でどうにか生きている、という回答もありました。相談先を探すことすらも大変で、なんとか踏ん張っているという状況のようです。

また、不安の理由は大きく2つありました。1つはシングルファーザー自身の「孤独」に関するもので、やはり相談先がないことや、体調が悪化したときに感じる方が多いようです。

もう1つは、子どもに関する不安です。前述の「子どもの教育」に関する質問では、進学費用に対する不安が挙げられていましたが、他にも子どもの将来を考え、「もしも自分がいなくなったときにどうなるのか」という不安などがあります。

「現在、ひとり親での育児に不安を感じているか」に対して、「はい」が過半数

「現在、ひとり親での育児に不安を感じているか」という質問に対して、「はい」という答えが78%、「いいえ」という答えが22%となりました。

また「どのようなときに不安を感じるか」という質問に対しては、「自分自身の体調が悪化したとき」、「子どもの将来を考えたとき」、「孤独を感じたとき」、「子育ての方法に悩んだとき」という回答が多く選択されていました。

回答を見ると、子どもに関する不安感が大きく、相談先や何かあったときに頼れる場所や人が求められているようです。

「周囲の理解が足りないと感じたことがあるか」に対して、「ときどきある」が最多

周囲の理解に関する質問に対して、「よくある」、「ときどきある」をあわせた約74%の方が「理解が足りないと感じたことがある」と回答しています。また、「まったくない」という回答は6%となりました。

母子家庭に比べ、父子家庭の総数が少なく、情報量にも差が生まれています。また、「ジェンダー平等」の後進国である影響もあってか、子どもの学校での「母の日」イベント開催であったり、周囲からの「男のくせに」といった偏見があったりと、シングルファーザーには困る状況が少なくないようです。

利用したい【支援制度】は、各家庭に合わせた支援やカウンセリング等の相談の機会

調査の結果、父子家庭の支援制度の利用は、あまり多いとは言えません。また、利用しない理由として、税金の減額などの制度は収入の金額によって利用できず、一方で子育てとの両立のため収入は減ると言う状況が1つあるようです。また、地方では支援サービス自体の少なさや、利用することへの周囲の無理解、また情報の少なさが課題となっています。

ただ、昔は少なかった「父子家庭向け」の支援が、いまは「ひとり親家庭向け」の表記に変わってきています。ブリーフケアなどのシングルファーザーやその子ども向けのカウンセリングや相談の機会が求められているとともに、各家庭に合わせた支援が増えることが望まれています。

行政によるシングルファーザーへの各種支援に対して、「満足していない」が最多

現在の父子家庭への支援制度について、「満足していない」が最多の27%で、「満足している」が18%、「やや満足している」が19%、「どちらとも言えない」が26%、「あまり満足していない」が10%という回答結果になりました。

利用したことのある支援制度は「上下水道の減免制度」が最多

実際に利用したことがある支援制度として、最多は「上下水道の減免制度」で44回答が集まり、次いで「医療費支援制度」、「児童扶養手当」と続きました。

設問に掲載した父子家庭への支援制度まとめ【2022年8月時点】

上下水道の減免制度

居住している都道府県や市によっては、上記の制度があります。詳しくは、「水道 料金 減免」+「地域名」で検索してみてください。

参考:水道料金・下水道料金の減免のご案内|東京都水道局

医療費支援制度

親または子どもの治療費を、自治体が代わりに支払ってくれる制度となっています。所得制限は、居住している都道府県や市によって異なるため、行政の運営するWebサイト内で検索してみてください。

参考:ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)|東京都福祉保健局

児童扶養手当

平成22年8月以降、父子家庭にも支給されるように改正されました。年6回、子どもの人数に応じた手当が支給されます。居住している市町村への申請が必要で、所得制限があります。

また、通常の「児童扶養手当」の所得制限に引っかかってしまうという場合、自治体によっては所得制限を拡充した別の手当によって支援している場合もあります。

参考:児童扶養手当について|厚生労働省
   児童育成手当|東京都福祉保健局

子育て世帯生活支援特別給付金

所得制限がありますが、子どもの人数に応じて、一律5万円が支給されます。

参考:令和4年度低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金|厚生労働省

所得税・住民税の免除・減免制度

ひとり親を対象とした税金の控除があります。詳細は居住している都道府県や市によって異なるため、行政の運営するWebサイト内で「調整控除」と検索してみてください。

参考:調整控除|西東京市調整控除|神戸市

保育料負担軽減制度

市町村民税非課税世帯の場合は、第1子から保育料が無料となります。また、所得制限はありますが、第1子は保育料を半額程度に軽減でき、第2子以降は無料となります。詳しくは、居住している都道府県や市の窓口やWebサイトにてご確認ください。

参考:よくわかる「子ども・子育て支援新制度」|内閣府

交通費の割引制度

居住地域によっては、交通会社などが割引券を発行したり、通勤・通学の定期券の割引をしたりしています。申請時には、「児童扶養手当証書」の提示が必要な場合もあるので、利用する交通手段ごとに検索してみてください。

参考:都営交通無料乗車券|都営交通無料乗車券

住宅手当

自治体によっては、住宅の家賃補助を行っているところがあります。詳しくは、居住している都道府県や市の窓口やWebサイトにてご確認ください。

また、低額な家賃で借りることができる公営住宅や公社住宅もあります。事前申込期間が決まっている場合も多いので、まずは都道府県や市の窓口やWebサイトで問い合わせてみてください。

参考:住まい|シングルママ・シングルパパ くらし応援ナビ Tokyo

自立支援訓練給付金

対象となる教育訓練を受講・修了した場合に、経費の一部の支給を受けることができます。対象となる講座や申込するタイミングについては、都道府県などによって異なるため、ご確認ください。

参考:母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について|厚生労働省

その他:ひとり親世帯臨時特別給付金

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、収入が大きく減少した方向けの支援があります。

参考:ひとり親世帯臨時特別給付金|厚生労働省

一方で、「より手厚い支援が必要だと感じていること」として、「児童に関する手当」が最多、次いで「学費補助」、「税金の減額」と続いています。

利用したい支援は「カウンセリングなどの相談の機会」「家庭に合わせた支援」

下記は、「このような支援があれば嬉しい」、「過去にあればよかった」という回答の一部です。

  • カウンセリング
  • グリーフケア
  • 子どもの心のケアができる場所
  • 家事、料理の相談先
  • 仕事の紹介、交流
  • 給食費のサポート、中学校の給食支援
  • 定期的な相談の機会
  • 同じような境遇の方々とのコミュニケーションの場
  • 生理用品の支給
  • 遺族年金
  • 各種制度の収入制限の撤廃
  • 年収ではなく、子どもの年齢・人数に応じた支援

シングルファーザー向け支援情報の紹介

最後に、無料または格安で利用可能な支援情報と、今回アンケートに全面協力してくださった、ひとり親交流サークル「エスクル」に関する情報を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

無料で利用できる、ひとり親支援サービス

1.厚生労働省「ひとり親自立促進パッケージ」

  • ひとり親の就業相談から就業支援講習会、就業情報の提供等
  • 資格取得のための訓練受講中の生活費補助
  • 就労による自立に向け、住居の借り上げに必要となる資金の無利子貸付

2.自治体による「学習支援事業」

  • ひとり親家庭などのための、子どもへの学習支援・居場所支援サービス
  • 対象年齢は要確認(小学生~18歳)
  • 「子どもの進路・生活について相談したい」という方向けの訪問相談支援もあり
  • 詳細については、現住所のある自治体のWebサイトを要確認

参考:板橋区学習支援事業(まなぶーす)|板橋区

3.認定NPO法人 グッドネーバーズ・ジャパン「グッドごはんの食品支援」

  • 東京都大田区および大阪府大阪市を拠点に配布している、ひとり親家庭向けの食品支援
  • 「ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)医療証」の提示が必要
  • 月1回のみ、食品を受け取れるが、指定の時間内に直接取りに行ける人向け

4.全国「こども食堂ネットワーク」

  • 上記から全国にある、子どもが1人でも入れる「こども食堂」を検索可能
  • 参加費は「0円~数百円」のところばかりで、大人も格安で利用可能
  • 開催場所・開催日時は要確認

5.株式会社トライグループ「ひとり親家庭等学習支援事業」

  • 「家庭教師のトライ」「個別教室のトライ」を運営している同社が、小学生~高校生向けに、自治体と連携して学習支援を実施
  • 勉強以外の課題(不登校など)に対する居場所支援も行っている
  • 支援の有無や詳細については、現住所のある自治体のWebサイトを要確認

格安で利用できる、ひとり親支援サービス

1.自治体による「ひとり親家庭ホームヘルプサービス」

  • ひとり親および中学生以下の子どもが対象の支援サービス
  • 食事、掃除、洗濯、育児、送迎などの提供が可能
  • 詳細については、現住所のある自治体のWebサイトを要確認

参考:ひとり親家庭ホームヘルプサービス|杉並区

2.フローレンス「寄付によるひとり親支援プラン」

  • 病児保育サービス
  • 朝8:00までの依頼で当日対応可能
  • 年収制限あり

3.認定NPO法人ノーベル「ひとり親パック」

  • 病児保育サービス
  • 入会金・年会費無料、月会費1,000円、保育料1時間あたり1,000円で利用可能(ひとり親向け、年収制限あり)
  • 入会はオンラインで完結、説明会もオンライン開催あり
  • Zoomを介して、直接相談もできる

4.NTT DOCOMO「子育てサポート割引」

  • ひとり親世帯の方を対象とした、毎月の携帯電話料金の割引サービス
  • 子どもが18歳を迎える前後まで、月額料金から1,100円をマイナス
  • 5分間の通話も無料となる

アンケートにご協力いただいた「エスクル」について

一般社団法人ひとり親支援協会が運営している、ひとり親交流サークル「エスクル」では、定期的にひとり親家庭向けのイベントを開催しています。また、LINE公式アカウントに登録することで、イベント開催時の写真報告やお役立ち情報などを受け取ることが可能です。

詳しくはこちら▶https://skuru.site/assoc/


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AUTHOR

もえこのアバター もえこ 在宅ワーキングマザー

大阪府出身、兵庫県在住。京都女子大学短期大学部文学科 卒業。現在、ライター歴・リモートワーク歴ともに4年目。 2人目の妊娠後、2017年から在宅ワークをスタートしました。執筆以外にも、Webライティング・リサーチ・事務・解析などに取り組んでいます。文章力アップとキャリア模索をしながら、娘2人の育児に奮闘中!読書・音楽・紅茶が好きです。

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